カフカ著『城』感想


 フランツ・カフカの『城』を読むのはこれで3回目か4回目になる。カフカの代表作といえば、朝起きたらなぜか巨大な虫になっていたという理不尽さが宇宙級の『変身』で、本当に衝撃的だった。キテレツな舞台設定だけでなく、物語全体に漂う、閉塞感、息苦しさ、不条理さ――ユダヤ人の歴史を象徴するような暗黒の運命というものをずっしりと重く感じ、強烈なインパクトだったことを覚えている。


 ということで、さらなるカフカの世界を堪能すべく手にとったのが、この『城』であり、これまでに何度も再読しているのだが、一度として最後まで読み切ったことはない。だいたい1/4かせいぜい1/3あたりで、ページをめくる手が止まってしまい、一応栞だけ挟んでそのまま放置してしまう。つまり、まったくおもしろく感じ無いのだ。


 そう言えば昔、僕が読んでおもしろいと感じたも本は妹にも貸して同様に好評を得ていたことがあった。ので、過去最高傑作としてライ麦畑でつかまえてを、満を持して推薦したのだが、次の日くらいにあっさりと「これはよくわからん」と言って、突き返されたことがあった。読書のおもしろさというものは、まったく人それぞれで、味覚にも似た予測不可能な部分があるということだ。だから、どれだけ名作と呼ばれる作品であっても、どうも馴染めないものや、その世界に浸れないものがあって当然。特に国や文化や宗教や時代が違うとなればなおさらなので、無理して読もうとか、おもしろいと感じなければいけないなんて価値を決めつける必要なんてないわけだ。ので、もう『城』を読むのは諦めようと思う。少し残念な気もするが。


【送料無料】城改版

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価格:882円(税込、送料別)

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な“城”は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない…。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
カフカ,フランツ(Kafka,Franz)
1883-1924。オーストリア=ハンガリー帝国領当時のプラハで、ユダヤ人の商家に生る。プラハ大学で法学を修めた後、肺結核で夭折するまで実直に勤めた労働災害保険協会での日々は、官僚機構の冷酷奇怪な幻像を生む土壌となる。生前発表された「変身」、死後注目を集めることになる「審判」「城」等、人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残している。現代実存主義文学の先駆者

前田敬作(マエダケイサク)
1921-2003。大阪・摂津生れ。東京帝大独文科卒。京都大学名誉教授。ゲーテカフカトーマス・マンなどの訳書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)