兄弟愛(一人やきう部)


 今さらだけど、台湾のことでも書く。台湾は楽しかった。ぜひまた行ってみたい国だ。


 で、そんな台湾旅行は、航空券だけ抑えて基本的にノープランで出かけたわけだが、一応のメイン・イベントとして「台湾の野球を観る」という課題を設けることにしていた。で、調べてみると、都合の悪いことに旅行中の日程では台北での試合はなく、新竹(シンチュウ)というところまで行かねばならないが、いたしかたない。片言の英語でバス乗り場を訊き、台北から高速バスに乗って約90分、新竹に移動した。最終的には、降りる場所を間違えて肝を冷やしたが、タクシーも利用してなんとか新竹に辿り着いた。


 新竹で適当に見つけたホテルは、幸運にも日本語が喋れるスタッフしかないというありがたいものだった。しかし、「これから野球を観に行くんです」と受付のおばちゃんに言うと、「今、野球なんかやってたっけ……?」と物申す。僕は焦る。かなり。なぜなら、野球を観るためにわざわざ時間を割いて新竹までやってきたのだ。道に迷って、タクシーまで乗ってだ。とにかく僕は新竹球場(中正棒球場‎)まで向かうことにした。


 新竹は「台湾のシリコンバレー」と呼ばれているITな街らしいが、僕が歩いたエリアではまったくそんな雰囲気はなく、向こうの方からジャッキー・チェンでも走ってきて、露店の果物を蹴飛ばしそうなアジアな街並みだった。しかし、僕はそんなアジアンテストを満喫する余裕もなく足早に歩き球場方面に向わなければならなかった。今日、この新竹の街で野球が行われるかどうか、はっきりさせたい一心でカオスなストリートを歩いたのだ。


 10分ほどで新竹球場に到着。試合開始2時間ほど前だが、球場入り口前に選手送迎用のバスが無造作に止められており、ごちゃごちゃと人が行ったり来たりしていた。「なんだよ、ちゃんとやってるじゃないか」と僕は思わず声に出して自分を安心させたくらいだ。


 確かに兄弟エレファンツは新竹をホームタウンとしてるチームではない。しかし、新竹は準ホーム地であるし、ホテルに勤めてる人なら地元で野球の試合があるかどうかくらい把握しておいてほしい、と思った。しかし、ここでひとつの哲学が生まれる。「世の中の女の人というのは、すべからく野球というものに疎い」。まあ、そんなもんだ。


 チケット料金は、250台湾元(約750円)の内野自由席と190台湾元(約480円)の外野自由席のみ。球場内にはビールはおろか弁当の販売もない。入り口付近で応援グッズが即席売店があるくらいだ。だから、僕は球場手前のセブンイレブンで、台湾ビール2本とビーフンを買うことにした。新竹はビーフンがおいしいと有名らしいからだ。まあ、コンビニのビーフンの味は台湾中どこも一緒だろうけどね。


 で、ここで苦労したのは、台湾のコンビニでは黙っているとビニル袋をもらえないということ。文字通り買った商品を手渡される格好になる。ビールはカバンの中にしまったが、温めてもらったビーフンは、右手に持って球場入りすることを余儀なくされたのだ。しかし温めてもらったビーフン片手に応援グッズをセレクトするのも嫌なので、道端に落ちていたビニル袋を(誰も見てないのを確認して)さっと拾い、そこにこれから食べる温めてもらったビーフンを収納し、球場入り。なかなか苦労したよ。


 で、やっとこさ試合がはじまるわけだが、台湾野球の応援というものは、とても不思議なスタイルで、サッカーの中東諸国の応援に似ている。太鼓がドンドン鳴る中で、応援団長風のおっさんが拡声器のようなもので応援歌をうたい、ときおり観客がそれに合いの手を入れていくのだ。「ちゃーちゃーちゃらちゃらちゃー(リード・ヴォーカル:おっさん)」「へいへい!(コーラス:観客)」「ドンドンドン……(リズム:太鼓係)」みたいな。まあ、聞いてるうちになじんでいったけど、少年野球の応援のようなことをいい年こいた大人たちがやってる、ましてや拡声器まで使って真剣にやってる図はとても滑稽だったね。あと、感じたことといえば、試合時間がやたら長い。4時間半くらいあった。ピッチャーはボールが多いのでなかなか試合が進まず、投手交代も必要以上にもたもたしている。あげく、5回終了時点でグランド整備がはじまるとともに10分ばかし休み時間みたいな休憩タイムになったくらいだ。スピード・アップをはかってる日本プロ野球は正しいと実感したね。


 試合は点を取られて、追いついてのなかなか見ごたえのあるゲームだったが、結果は4対5で敗北。背番号18の曾嘉敏という一見岩隈みたいな投手がエレファンツの先発だったが、ボール先行でまったくピリッとしなかった。野手では背番号23の彭政閔(ポン・ジェンミン)が、カリスマ的人気を誇っているようだが、4回くらいで退いてしまった。背番号50の陳致遠(チェン・チツェン)は、ヒゲヅラでマニー・ラミレス風のイカツイ風格。ちょっとしたレフト線の打球処理もてんやわんや状態だったが、なかなかパワフルなバッティングで味のある選手だった。あとは、いろいろいて全部覚えてるわけじゃないけど、兄弟エレファンツの選手にはなかなか親しみがもてたね。アジア・シリーズとかで日本に来たら、ぜひ応援したいと思う。


◆中華職棒大聯盟單場明細


【一人やきう部、通算成績】

カード 勝敗 選評
5/4 石川-信濃 初M's観戦は逆転勝利
5/6 D-C GWナゴド遠征も延長12回ドロー
10/25 兄弟-LaNew 台湾野球観戦、1点差敗退も充実の試合


成績 ≫ 1勝1敗1分
特殊能力 ≫ [遠征してのホーム][試合時間長い]