18年ぶりに部活動の現場に出てみて気付いたこと


 ひょんなことから中学の部活でコーチをすることになったんだよね。今では、「外部コーチ」という制度があって、学校の先生、つまり顧問の先生以外でも部活動の指導ができるようになってるんだってね。もちろん学校側の許可が必要だけどね。で、聞くところによると、この「外部コーチ」ってのはなかなかの名制度のようで、これまで閉じられていた学校という機関に教員でない人間が入ってくることにより、風通しが良くなったという効果もあったんだってさ。つまり、生徒にとっては、部活以外のことでも相談したり会話できる大人ができたことで、いじめが減ったり、トラブルが減ったりしたという話だよ。嘘かホントか知らないけどね。


 んでさ、まあとにかく僕も、その外部コーチとやらの立場で1〜2回練習に出て、ちょこちょことあれこれと指導をして、いよいよ練習試合をすることになったわけさ。というのも、来週は「県大予選」という大会があって、3年生にとっては最後の大会になるんだよ。だから、その最終調整をするって魂胆だよね。岡田ジャパンコートジボワールと試合をしたようなあんな感じだと思うな。ああ、言い忘れてたけど、僕が何の部活を教えてるかっていったら男子バレー部なんだ。てか、バーレボールを触るなんて、かれこれ18年ぶりくらいなんだけどね。それこそ、自分が中学でやってたとき以来だよ、まったく。


 で、だよ。この日は県ベスト4という強豪校と、我々チーム含む適当な2校の計3校で練習試合をしたんだけどね、僕は気づいちゃったんだよ。重大なことにね。それはさ、傍から見てるとね、部活動って「先生に怒られないようにこなすスポーツ」に見えてしょうがないってことなんだ。まあ冷静に考えると、そんなの当たり前なのかもしれないけど、もっと客観的に考えると、なんでそこまでして部活をしなければいけないのか、わかんなくなるよね。そんな活動から何を学び取れるのかなって。軍隊でもあるまいし。


 僕が疑問に思ったのはね、とにかく「厳しい指導」ってのが優先されてて、「勝つ」ことへのアプローチや解釈がないがしろになってることだよ。もちろん悪いプレーに対しては注意をするのが当然だと思うけど、「じゃあ次、どうやったら防げるのか」はもちろん「結局勝つことをゴールとしたとき、今のミスはどれくらいのダメージ、またはどの程度の些細なことなのか」がまったく明示されない気がしたんだ。細かい部分にいちいちダメ出ししてるだけで、それを修正したところで「勝つ」チームにはなれっこないってことだよ。もちろん素人目なんだけどね。



 僕らが中学生だった時代からかれこれ18年も経っていて、身体のケア、鍛え方はもちろん、スポーツを取り巻く環境には教育や食や脳科学などの様々な分野が融合し大きな変化があったにも関わらず、中学校の部活という現場で行われているスポーツ活動はまったく変わってないんだよ。否、変わってないような気がしたんだよね。2つのチームを見た限りはね。それも多分学校という場が閉じられているからだろうね。


 ちなみに僕がやったことは、先週の1回の練習と当日の2セットの練習試合で収集したデータを生徒に提示し、「勝つ」ためには何が重要で何が重要でないかを教えて、一つひとつのプレーの目的と効果と考え方を明確に伝えたんだ。それだけで、チームはガラリと変わったんだよ。そもそもこの日はレギュラーの1人が体調不良で欠席してて、ルールもろくすっぽ知らない1年生を出さざるを得無い状況下、実質5人のチームで勝負しなければいけないのに、それでも勝てたわけさ。「勝つ」イメージを共有させたからだろうね。「怒られないためにやるバレー」VS「勝つためのバレー」じゃ、勝負は決まってるでしょ。んで、「勝ち」さえすれば、生徒は勝手にエクセレントなプレーを連発してくれるんだよ。指示もしてないのに勝手にね。「オマエそんな上手かったっけ?」ってようなミラクルを軽々とやってのけるわけさ。その辺が中学生というまだまだ発展途上の人間の素晴らしさだと思うんだけどね、僕は。


 まあ、偉そうなこと言ったけど、本当に厳しい練習に耐えてきたチームは本番にこそ強いことは間違いないと思うけどね。だから、「大会」という場で、中学校部活動に対する僕のこのアプローチがどの程度通用するのか、非常に来週が楽しみだよ。