漫才師が弁護士よりも勝っている点

上岡龍太郎上岡龍太郎かく語りき』
(弁護士である上岡龍太郎さんのお父さんの言葉)


 弁護士は国家試験通ったて言うけれど、あんなもんは国家試験やない。官僚試験や。一部のもんが決めたことに答えるだけや。その点、お前ら[漫才師]は毎日のようにラジオ・テレビに出て、国民の審査を受けて、よければ上へ浮かびあがる。これがほんまの国家試験や。


 大学受験で勉強している頃、予備校の先生が「受験ほど簡単なものはないぞ。毎年毎年必要な教科は決まってるし、同じようなとこから同じような問題しかでない」と言っていたのを覚えている。まあ、確かにその通りだと当時から思っていた。要領よく時間さえかければなんとでもなるもんなのだ。まあ、終わってしまって、もう2度と関わることが無いから言えるとこかもしれないけど。


 一方で、おもしろい漫才師というか、お笑い芸人になろうと思ったら、何を勉強するのだろうか。受験とか、会社で1つの企画を考えるよりよっぽどたいへんなチャレンジであるような気がする。書店に行けば、企画書の書き方だのビジネスマナーだのMBA取得だの、いろんなスキル本があるし、ダイエットの方法やモテるためのマル秘テクニック本もあれば、自殺のマニュアルだってある。でも、『誰でも3日で漫才師になれる!』なんて本は見たことない。まあ『ウケる技術』みたいな本も流行ったが、あれは一般人用に書かれた本だからまた別物だろう。ましてや、「おもしろい」「おもしろくない」を判断するのは、そのときどきの世間一般であって、流行り廃りも激しいだろうし、何を基準にネタをつめているのか、とても不思議に思う。まあ、案外適当にやってるのかもしんないけどね。


 でも実際のところ、お笑いの人というのは、僕らなんかよりよっぽどきびしい世界を勝ち残った人たちなんだろうね。そう考えると、型にはまった作業しかしてない自分なんかよりずっと立派だなと思う。