ファミレス、ランプ、ラクダのようなゆっくりとした食事


 4月3日午前2時。1人、僕はジョナサンにいる。


 外は小雨が降っていて、いや、もう降っていないかもしれないけど、さっきまで降っていて、僕は傘をさしてジョナサンまでやってきた。僕の席から窓越しに見える外では、道路工事をしているらしく、黄色いランプが狂ったセミのようにせわしなくくるくるとまわり続けている。僕はその黄色いランプを見ながら最近起こった出来事でも反芻してみる。


 千鳥ヶ淵の桜がとてもきれいだった。友人の父親が死んだ。これといった原因もわからない急死らしい。石神井公園で花見をした。視力回復のレーザー治療を受けた友人と話をした。0.07の視力が今は2.0になっているらしい。彼の紹介で僕も治療を受けると、彼の手元には紹介料30,000円が入り、僕は15,000円割引で治療が受けられるらしい。肝心の治療費は170,000円くらいだとか。友人の友人が男にフラれたらしい。アマゾンで買ったデスノートのDVDを観た。昔のバイト先の友人が結婚するらしい。その知らせを聞いた後、偶然にもメッセに現われたその友人とあれこれ話をした。でも内容は特に覚えてない。


 そのうちに、ビールと若鶏のみぞれ煮が運ばれてきた。なぜなら僕が注文したものだからだ。僕はとてもゆっくりと、砂漠を歩くラクダのようにゆっくりと若鶏のみぞれ煮を食べて、ビールを飲む。そして、息継ぎをするようにぼぉっとする。年をとるとこんな食事の仕方もあるのだろう。昔、仕事から帰ってきた父親が、いつまでもいつまでも、永遠というものに向かい合っているくらい時間をかけて、箸で何かをつまみ、酒を口につけていた姿を思い出した。多分、僕もそれに近付いているのだろう。僕はビールをおかわりした。


 窓の外ではランプがまわり続けている。僕はその黄色いランプに親近感を覚えるようになった。自分と似ているからだ。一生懸命動いていて、絶え間なく活動しているのだが、実際、何かの役に立っているのか、いないのかさっぱりわからないから。


 僕は深夜のファミレスが好きだ。ぼぉっとするのにこれ以上の場所はないだろうと思う。


 そして僕は1,927円を支払ってジョナサンを出た。3時半だった。