5月14日の公園にて


 天気がよかったので、公園に行って食事をすることにした。前の職場のときは、よくコンビニで弁当を買って、公園で食べていたものだった。こういうのって、けっこう悪くない。


 砂漠にラクダがいるように公園にはハトがいる。エサとして誰かが意図的に落としていったのか、事故的に落としてしまったものなのかわからないが、菓子パンのカタマリにハトが群がっていた。ただ、パンのカタマリが大きすぎるのか、嘴でいくらつついてはいるものの飲み込むにはいたらない。つついてははじき、つついてははじき、つついてははじき、つついてははじきつついてははじきつついてははじき……。もうそれだけで、そのパンくず分のカロリーを消費してしまうんじゃなかろうかというくらいの苦労をかけて、ハトたちはパンを食べようとしている。しかし、ハトは何をやってもあまりカロリーを消費しないのかもしれない。僕はハトのことなど何も知らないに等しい。そんなハトを見ながら僕も食事をする。僕は箸を使えば効率よく食事をすることができるし、自分でいうのもなんだが、僕の箸の持ち方はきれいな方だと思うからなおさらだ。


 食事を終えて、公園を見回すと、そのベンチに座っているサラリーマンはみんな自分よりあきらかに年上であることに気づいた。下手すれば、僕が生まれた頃からサラリーマンをやっているくらいだ。彼らはただ目を閉じて居眠りをしたり、何か文庫本のようなものに目を落としたり、ただぼおっと遠くを眺めていたり、めいめいに時間をつぶしている。彼らは今日までどれだけの仕事をこなし、どれだけの数字を残し、どれだけのものを創造し、どれだけのものを世の中にリリースし、どれだけのお金を稼いできたのだろうか。そしてその対価として、どれだけ消耗し、どれだけ磨耗し、そしてどれだけ磨り減ってきたのだろうか。この公園に何を求めて彼らはやってきたのだろうか。休息なのだろうか、それとも逃避なのだろうか。もしくは、僕が想像もつかないような大きな、もしくはちっぽけな理由があるのかもしれない。そう考えると、僕の目の前にある現実や、僕が背負っているもの、僕が抱えている問題や課題なんてものはどうでもいいもののように思えてきた。


 僕はそんなことを考えているうちに眠くなったので、少し目を閉じてみる。5月14日午後2時半。多分、世の中は平和である。