最後の変身、横で書くか、縦で書くか


◆平野啓一郎 著『滴り落ちる時計たちの波紋』Amazon.co.jp


 短篇集というくくりでいいのかな、まあ、9つのお話が入ってる。


 前々から、この作家さんには興味はあったのだが、歴史的な切り口の作風が多いイメージが強かったので、なんとなく敬遠していた。でもまあ、たまたま書店に行ったときに新刊が出てたので買ってみた。


 で、やはり、カフカの「変身」をモチーフにした「最後の変身」が一番おもしろかったかな。立読みするには長い話だけど、これだけは、読んでみてもいいと思う。永遠と自問自答するというか、モノローグ調で展開してく話なのだが、ぐいぐい引き込まれるし力強さはあると思う。まあ後半にネットに関してどうこうという部分はくどいような気もするが、カフカの「変身」の解釈を現代風に解説している部分は、なるほどおもしろい視点だなと思った。


 ただ、わざわざ横書きにする意味があったのかな、と思ってしまう。まあ、ネットを意識してとのことらしいが、普通に縦書きだった方が、もっとブンガクっぽくなっただろうに、横で書かれている(もしてやページは右から左へ展開する)だけで、チープに感じてしまう部分も多々あった。でも、この人、文字の表記やページの使い方でけっこう遊んでるらしいから、これもこれで、味なのかもしれないけどね。


◆HIRANO_KEIICHIRO_Official_Website


※参考
◆10代の女の子たちが「ケータイ小説」にハマる理由活字中毒R。