7からはじまる、その後の10年


落花流水◆山本文緒 著『落花流水』Amazon.co.jp


 友人から薦められたのだけど、なかなかおもしろかった。気に入ったところは諸々あるのだが、一番興味を持ったのは、この小説の舞台設定というか展開の切り口。この物語は、1967年からはじまり、1977年、1987年、1997年、2007年、2017年、2027年と10年区切りのシーンが登場する。なので、最初に7歳で登場した人物は、この物語の最後では67歳になっているのである。その10年ごとの1シーンだけ切り取って綴っているのである。そんなちょっと変わった構成。


 単なる偶然なのだが1977年は僕が生まれた年で、1997年は僕が東京に出てきた年。で、2007年は今年だ(ちなみにこの小説は1999年に書かれている)。なんとなく、そういうめぐり合わせもあって、おもしろく読めたと思う。


 10年という時間は、僕らを取り巻く環境や立ち位置を大きく変えてしまう。たくさんの新しい知り合いが増え、何人かの人間が死ぬ。何組ものカップルが結婚をし、何人かの子どもが誕生し、何組かの男女が別れる。しかし、10年という歳月を経ても変わらないものは何も変わらない。結局は同じ人間なわけだし、ひとりの人間のまわりでは、いつも似たようなことばかり起こる。多分、そういうのを運命とでもいうのだろう。


 で、当然のことながら、1997年の僕にとってみれば、2007年の僕なんて想像すらしなかった生活をしている。2017年の僕は、誰と一緒に何をしているのだろうか。そんなことを考えてしまう。