チョキ、チョキ、チョキ



ハサミ男殊能将之


 とても不思議な作品だった。


 まあ、タイトルから大よその予想がつくように、殺人事件が起き、それを解明していくという話。精神的にキレてる犯人と、それを探し出す刑事の二重構造という構成でストーリーは進行していく。僕好みの文体でもないような気がするし、そんなに意外な展開も見せないのだが、けっこう熱中して読めた。登場人物1人ひとりに親しみが持てたからかと思う。


 この作品の中で、一番共感できた部分、犯罪心理分析官のセリフを下記に引用。

「無動機殺人の場合は、今言ったような意味での『普通の動機』がありません。だから、どうなに遡って動機を求めても、誰も納得をすることはできない。そこで最終的に、犯人は頭がおかしかったとか、不幸な幼児体験をしたとか、そういった理由が見出される。人々は納得したいんですよ。なんの意味もなく、人を殺す人間がいるとは思いたくない。そういう人間を目のあたりにしても、なんらかの意味や理由を見出したい。だから、無動機殺人者の心理を知りたがる」


 1999年、第13回メフィスト賞受賞作品。同年「このミステリーがすごい!」第9位。2005年には豊川悦司麻生久美子主演で映画化もされている。まあ、好き嫌いがあるだろうが、気になる人はどうぞ。


 ちなみに作者、殊能将之(しゅのう・まさゆき)さんはメディア嫌いで有名らしいが、サイトの更新はマメに行っているらしい。こちらも気になる人はどうぞ。


◆mercy snow official homepage


【以下ネタバレ注意】


 まあ、読みはじめてすぐにこの物語全体にかけられたトリックのひとつがわかってしまったのだが、それでも充分楽しめたと思うな。ちなみに、かつて僕が絶賛してた『殺戮にいたる病』(我孫子武丸著)という小説があるのだが、この話が受け付けない人は、『ハサミ男』もNGだろうね。


◆我孫子武丸 著『殺戮にいたる病』<Not Found (2006.06/02)