Say good bye ただ Good bye



『グッド・バイ』太宰 治


 ダザイにとっての未完の遺作『グッド・バイ』。前々から読みたいと思っていたのだが、この機会に読んでみた。まあ、この文庫自体は短編集なんだけど、やはりそのタイトルと境遇を考えると、『グッド・バイ』という作品に対しては、非常に興味をそそられる。


 いわゆる、『人間失格』的などろどろとした告白書、遺言的ニュアンスのモノローグかと思っていたが、まったく違い、付き合ってきた女たちに別れを告げるという物語だった。あげく、シリアスなものでも、ロマンチックなものでもなく、どちらかといえば滑稽なストーリー。こんな話を描いてる途中にどうして死のうなどと思ったのだろうか疑問に思ってきたとたんにぷっつりと話は終わる。まあ、人生そんなもんなんだろうな。


 処女作が『晩年』などというヘソマガリなタイトルで作家デビューを果たしたダザイ。しかし最後は素直に『グッド・バイ』というタイトルのユーモラスな未完成作品を残し、愛人と入水自殺。ダザイという人間の魅力が今もなお生き続けている所以がここにあるような気がする。