口ってものはどうも変な器官だよね。ちなみに説明しとくけど、「ろ」じゃないよ、「mouth」だからね。まあいいや。まずね、そもそもの役回りが多すぎるよね、口は。例えばさ、目だったら「見る」役目があって、鼻だったら「嗅ぐ」「呼吸する」、耳に関しては「聞く」と「平衡感覚を保つ」という2つの仕事があるわけだけど、口に関しては、「食べる」「喋る」「呼吸する」と3つもあるわけだよ。しかも、この3つがそれぞれなんら関連性がないよね。「嗅ぐ」と「呼吸する」だったら、なんとなく似たようなアクションだけど、「食べる」と「喋る」とか、何の繋がりも見出せないよね。むしろ、インプットとアウトプットという意味では真逆のベクトルだしね。どうして神様は、生命体の口にこんな寄せ集めみたいな機能を搭載したのか疑問に思わないかい。


 でね、さらに付け加えるとだね、口というものは、物質的に存在しないわけさな。というのも、「自分の口を触ってみて」と言われても、君は迷っちゃうと思うんだよね。ん? いやいや、違うね、君が今触っているのは唇だからね。それは口じゃないよね。うん、そんな具合に「口」ってのは、不思議な存在なんだよ。


 でね、この話には別にこれといったオチはないんだよ。これでおしまいさ。歯医者に通っているうちに、なんとなく思いついただけのことだよ。