ガソリンの入れ方


 今朝ガソリンを入れたんだ。ガソリンを入れると不思議と気分がよくなるんだよね。うん。ガソリン残量がなくなると、メーターの針が、リストラにあったおっさんのように、げんなりとうなだるように下を向くよね。こんな状態でドライビングしてても、テンションは上がらないわけさ。でも、満タンにして、高みを目指すチャレンジャーのように針が上を向いてると、右足だってアクセルの踏み甲斐を感じるってもんさ。宿屋に泊まったあと、HPもMPも満タンになってるステータスを見ると、それだけで満足感を得られるのと一緒だね。



 手間隙はかかっても、ガソリンを入れるという行為は車を所有する人にとっての喜びのひとつのような気がするんだよ。アクセルを踏んだときの爽快感はもちろん、車内環境を整えたり、移動する便利さなどと同様のね。どこかのキャッチコピーじゃないけど「ココロも満タンに」ってのは、ガソリン会社にとってジャストミートな宣伝文句だと感じるね、まじで。だって、「ガソリンを入れなきゃ」と思うと、しちめんどくさいけど、いざガソリンを入れ終わってみると、とてもいい満タン気分になるんだ。


 減ってきたものを補う喜びってのは、どこかしらにあると思うんだ。だから、ハイブリッドカーとかエコカーとか電気自動車とか、いろいろ開発されているらしいけど、ガソリンが必要ない車ってのはまず売れないだろうね。持ち主がエネルギーを補給しなくても、勝手にパワー・チャージしてどこまでも走り続ける車ってのは、大きな喜びがひとつ欠落した車だからね。



 もちろん、維持費ってのはバカにならないから少ない方が良いに決まってるけど、ガソリン補給が無くなればなくなったで、「つまらなくなった」と思うのが、人間のサガというか、人の複雑怪奇な部分だと思うな。僕だって、食事をしなくていい身体にしてやると言われても、断るからね。たとえ食費にかかるお金がゼロになることがわかっていてもね。君だってそうだろ。車だって同じだよ。