採用面接での攻防


 少し前に新卒の採用の面接に出たんだ。もちろん、出たっていっても、採用される側ではなく、する側としてだね。


 でさ、新卒者を迎え入れたい弊社は、採用担当の人と、採用を希望する部署の人間の僕という2人組だったんだ。もちろん採用担当の人とは普段はまったく別の仕事をしてるわけだから、一緒に何かをするなんてのははじめてのことなんだよね。で、特に打ち合わせなんてしないわけだけど、何となくやってるうちに、採用の人が概要を一通り説明して、僕が部署の説明をして、また採用の人が個人の希望を聞きつつ人柄をさぐる、みたいな仕事分担ができあがったんだよね。なかなかいい具合にね。



 でもさ、新卒の人は全部で10人以上いたわけさ。つまりは、同じようなやりとりを10回以上繰り返すってことなんだよね。新卒の学生にしてみれば、はじめて聞く話だから、うんうん、と真剣に聞いてるわけだけど、僕らからしてみれば「また同じこと言ってるな」「また同じこと言ってるよ」と、妙にお互いの存在を気にするようになってきたわけさ。その結果さ、午後からの面接にはいると小さなアレンジをしちゃいだすんだよね。例えば、仕事分担からすると僕が説明すべき文言を、先に採用の人が言っちゃうとかね。そうすると負けじと僕も「学生のときはどんなことを勉強しましたか?」とか、いらんこと聞いたりしちゃったりね。するとさ、さっきまではいい具合に説明できてたことが、ぎこちなくなるんだよね。まあ、自分の専門外のことを質問してるわけだから、言葉に詰まるのは当たり前なんだけどね。


 こういうのを見栄って言うんだろうね。別に俺は同じことしか質問できないわけじゃないですよっていうさ。ホントは一番重要なのは、新卒の人にわかりやすく説明して、その人の希望を聞くことなんだけど、いつの間にか互いのパートナーのこと気にしちゃってるんだよね。人間ってのはおかしないき物だと思ったよ。まじで。