「自分の好きなことを仕事にしてはいけない」

◆結局は自分の好きなことを貫き通したやつが負けハックルベリーに会いに行く (2010.01/14)


(前略)
 去年から、ワタナベコメディスクールというお笑いタレントを養成する専門学校で講師をしているのだけれど、そこで教える中で徐々に明確になってきたのは、「結局は自分の好きなことを貫き通したやつが負ける」ということだ。
(中略)
 ではなぜ自分の好きなことを貫き通すと負けてしまうのか?
 ぼくの分析したところでは、その理由は大きく分けて三つある。
 一つは、自分がそれを好きでやっているということは、裏を返せばお客さんへの奉仕の気持ちが足りないということになり、それを見透かされて、お客さんの気持ちを萎えさせてしまうということがある。
(中略)
 そして最後の三つ目は、これが一番重要なのだが、「人間というものは、本来的には『人に喜んでもらうこと』を至上の喜びとして感じる生き物だ」ということがある。
 人間は、本来的には「社会的な動物」なので、ほとんどDNAのレベルから、「他人に喜んでもらうことこそ本当の喜び」だというふうにプログラムされている。だから、自分の好きなことを貫くことは本来的な喜びとはならないはずなのに、生まれてきてからの誤った教育のせいか、そのことを忘れたり、考え違いをしてしまっている人間が多いのである。
(後略)


 僕もね、かねがね思ってたんだ。「自分の好きなことを仕事にしてはいけない」ってね。好き故に持つ「理想」と、仕事として求められる「現実」とのギャップにうんざりしてしまうからだろうと分析してたんだよね、僕なりに。



 でも、もう一段階深い深層心理として、他人目線というか、ユーザー・メリットを考慮しなくなるって要素があるんだね、好きなことをやってる時間って。「ああ、コイツ、本当に●●が好きなんだな」って奴は、たいてい一緒に喋っててうざいからね。ああ、もちろんお互いが同じ趣味を持っててマニアックな話をしてるなら問題ないよ。うざいってのは、こっちは興味ないのに、それに気づかずに熱弁されることを言ってるんだよ。わかるよね、付いていけないってやつだよ。そんな知り合いレベルでもうざがられるようなスタンスで仕事すれば、世間一般からはまったく支持されないのは当然だね。まじ。もちろん、ターゲットとなる顧客側が、マニアックでコアな情報やサービスを求めていれば作り手側の「本当に好き」も実を結ぶのかもしれないけど、世の中のたいていの人間って広く浅い知識しか持ち合わせていないもんだから、作り手側が好きなことを貫いたサービスってのは、精度に欠けるんだろうね。需要がなければ供給は意味を成さないのに、「好き」であればあるほど、供給にかたくななこだわりをみせちゃうからね。


 つまりさ、自分の好きなことってのは、自分を満足させるだけのカラオケみたいなもんなんだよ。カラオケを仕事にできるわけないもんね。若い人はね、早くそれに気付くべきだよ。まじで。