風景〜D.Stroy


 続き。


 フォークソングでもないのに「風景」ってタイトルもどうかと思うけど、とにかく「風景」って曲と「D.Story」って曲は似たような時期にできたんだ。それぞれ3rdデモテープに収録。


 で、ちょうど、この頃かそのずっと前からか忘れたけどヴォーカルが村上春樹村上龍にハマってて、この2曲の詩はモロにW村上臭がするんだよ。で、「じゅんちゃんも春樹と龍は読んどいた方がいいよ」というアドヴァイスをしきりにもらってたんだ。んで、何故か説得力を感じ、『ノルウェイの森』を買って、『イン・ザ・ミソスープ』も読んで、以来片時も書籍を手放せない人間になってしまったんだ。それまで僕はからきし読書なんてしなかった人間だったのにね。わかんないもんだよね、このときの何気ない会話がその後11年間の大部分を形成するなんてね。まあとにかくさ、「D.Story」って曲は新宿って街の朝方が舞台になってるんだよね、確か。だからさ、僕は今でも村上春樹の『アフターダーク』を読むとこの曲を思い出すんだ。一部では「よくわかんない」と評されている『アフターダーク』だけど、僕にとってはとても深いところに響く作品だね。で、当時この「D.Story」の詩を載っけたフライヤーなんかを配ってたら、「感動しました」とか「まるで自分のことを歌ってるようです」とか「これは私です。どうして知ってるのですか?」みたいなカルト志向あふるファンレターがわっさわっさと届いたという虎舞竜のようなエピソードもあるんだ。まあとにかく、いい詩だと思うよ。1999年的にって注釈が入るかもしれないけど。


 演奏的には、この曲あたりから「リズムとは?」みたいなことをちゃんと考えるようになって、まじめに演奏しはじめた記憶があるね。「どうすればリズムキープができるか?」とか「エイトビートは4で感じて刻め」とか「裏はアクマでウラ。すべては表のために意識すべし」とかね。だから、この2曲は、とても思い入れのある曲だよ。あと、「D.Story」のギターソロ部分のリフはメタリカかなんかのパクリ。



 ちなみに、チラチラと見えると思うけど、僕はスーツを着てるのに、白いバッシュを履いてるわけさ。当時21歳の僕は、これくらいハズしてる方がカッコいいみたいな考えでいたんだけど、どう見ても変だよね。でね、ついでに言うと、ホントはこの日10センチのシークレット・シューズを履こうと思って準備してたんだよ。なかなかカッコいいやつ持ってたんだよね。でもね、「荷物がかさばる」という理由でやめたわけさ。今でもはっきり覚えてるね。「ああ、何か楽器とか衣装とか持ち物いっぱいだしバッシュでいいや」ってね。もう最後のライブだってのに、肝心なところですら妥協点が低いというのは、10年以上前から変わってないね。


■風景〜D.Stroy【NOBLE FLEA】1999.09/02 (2)

D.Stroy


誰もが笑顔に 影を落とすのは何故 最終電車を 見つめていたんだ
幼いあの頃 愛してるを何度も 繰り返した母 今なら理解るよ


目の前を行くすべての人を 抱きしめてしまいそうだ


朝が訪れるまで 僕を吹き抜ける
街の風は冷たく 心が見えない
愛し愛されたくて それだけなのに
僕ら理解り合えない 傷が傷を生む?


真夜中 華麗に街を駆けてく少女 教えて その瞳に何を映してる
いくつもの恋を くぐり抜けたお前の 口唇 指先包んであげたい


鎖された世界に生れ落ちて 一人きりで愛を叫んだ


たとえ悲しくたって 微笑んでいよう
たとえ奪われたって 与え続けよう
愛し愛いされたくて それだけのために
僕らどれだけの数 涙を知るのか


いつかすべて許せる その日は来るから
決して諦めないで 愛を止めないで
泣き疲れて眠った 僕は待ってる
街を優しく照らす 太陽を待ってる


Noble Flea