虹【NOBLE FLEA】1999.09/02


 これでやっと最後だよ。


 アマチュアバンドのライブってのは、たいてい1バンド30分の持ち時間で演奏して、4バンドくらいで交代して行われるんだよね。つまりさ、君が普通にプロのミュージシャンのライブとか行くと2時間くらいずっとそのバンドの演奏を聴くわけだけど、その辺の素人バンドってのは、とてもじゃないけど2時間も人前で演奏なんてできやしないんだよ。だって30分以上のステージってのは未知の世界なわけだからね。この日はいわゆるひとつの自分らが主役なわけだから、50分くらいのステージだったわけだけど、たかだかオーバー20ミニッツなだけで最後の方はくたくただったね。少なくとも僕はね。


 でね、この「虹」という曲は、僕がこのバンドに入ってから完成した曲で、ご覧の通り最後の最後まで演奏してたという象徴的な名曲なわけさ。まあいかにもバンドブーム時代の曲って感じもするけどね。


 まあとにかくさ、この頃はみんな二十歳くらいで「学生」ノリというか、まあそもそも学生だったから、何も知らない強み、みたいのはあったね。で、その後、しばらく1年くらいは、ヴォーカルなしでこそこそ練習だけしてて、やがて違うヴォーカルを発掘して、違うバンドとしてまた音楽活動に入るわけだけど、この頃のような若さというか傍若さは消えていたかな。もちろん、楽曲的にもテクニック的にもハイレベルにはなっていたと思うけど、どこかしらに焦燥感が見え隠れしたね。世の中をことを知ってきた弱みというやつかな。まあ少なくとも僕はね。


 だからね、今自分の人生を振り返ってみても、このバンドをやっていた時間が一番無敵だった気がするね。失うモノがあってもたいして目に入らないし、得るモノがなくても都合のいい想像力だけは無限にあったってね。つまりさ、僕の言いたいことはわかるよね。このバンドやってた時期を何かに例えるとすなら、まあ、虹なんだろうなってね。それが現実なのか幻想なのかはっきりしていないけど、でも、それはそれとして味わえただけでハッピーで意味があったんだなとね。


■虹【NOBLE FLEA】1999.09/02 (6)