「最近の若いヤツは」という発想について


 さすがにこの年齢になると、自分よりも年下の人間と接する機会が増えてくるから、定番とも言える「最近の若いヤツは」みたいなことを思う瞬間が増えてくるんだよね。でね、最近気づいたんだけど「最近の若いヤツは」ってセリフは、とてつもなくズルい発想だなって思ったんだ。



 例えばさ、僕は「俺がこいつくらいの年齢のときは、もっと本を読んで勉強してたぞ」とか思うことがよくよくあるんだ。似たような感じで、君も君なりに常々思い浮かぶ愚痴ってあると思うんだ。「最近の若いもんはろくすっぽ挨拶もできん」みたく。けどさ、こういう発想ってのは、自分の得意な分野に関してのみ生まれる愚痴だと思うんだよね。つまりさ、自分がこれまでにたくさん本を読んで勉強してきたという自負があるから、他人にたいして「物足りない」と思うわけさな。だからさ、僕なんかは映画をあんまし観ないタイプなんだけど、良い映画をたくさん観ることだって、人生勉強にはなるはずだよね。でも、映画を観てない僕にとっては「最近の若いヤツは全然映画観ないんだな。映画から人生観変わることだってあるのにな」なんて愚痴は絶対生まれないわけさ。もしかしたら、その若いヤツが映画をいっぱい観て、そこから多くの価値観を吸収し、世界観を更新してたとしてもね。


 つまりさ、僕が気づいたのはこういうことだよ。「最近の若いヤツは」って思った時点で、それは自分に酔ってるだけで、相手のことを本当に理解しようとは思ってないんだろうなってね。自分が年上ってだけで、これまでの経験を自慢し、偏った視点での短絡的な判断で済ませてるだけなんだと思うんだ。ま、こういう年寄りの小言が、若い人間にとっての社会勉強にもなるんだろうけどね。