瀬名秀明著『デカルトの密室』感想



『デカルトの密室』瀬名秀明


 要所々々でとてもおもしろいエピソードやフィロソフィーがあるんだけど、全体としてぼんやりとしか話の筋はつかめなかったな。いろいろ入り組ん出てややこしいんだよ。とにかく形式上最後まで読み切ってやった(エピローグは読んでない)という感じかな。中途半端は厭だからね。まあ、キーワードとしては、思考能力、自我、ロボット、といったところかな。


 その中でもね、一番「ふむ」と思ったことでも紹介するよ。「人間の行動こそパターン化されているよね」みたいなセリフが出てきた部分だね。さっきも書いたように、この物語はあるロボットを中心に進んでいくんだけど、ロボットって、誰かがプログラムしたパターンの範疇で動いているだけのものだよね。お掃除ロボットは掃除しかしないし、受付嬢ロボットは受付案内しかしない。こういうときは、こうしろってね。でも、よくよく考えてみたら、人間だってある一定の法則の中で動いてるわけさな。朝コーヒーを飲む人は必ずコーヒーを飲むし、家から会社までの道のりだって毎日まったく一緒なはずなんだよ。朝起きたら、コーヒーを飲め。会社まではこのルートで行け、みたくね。ただ、人間の場合は、誰がプログラムしたのかわかんない、ってだけで、やってることはロボットとそう変わんないわけさ。


 そして、誰しもその人間のパターンってものに興味津々だよね。血液型の本が売れることはもちろん、マーケティングや上司や部下がどうこうってなビジネス本においてすら、人間の行動パターンを集約したものだと思うんだ。そう考えるとさ、そういう人間心理の行動パターンを丁寧にまとめれば、それなりの人間ロボットができてもおかしくないような気がするんだ。まあ人間のようなロボットは複雑だとしても、いい加減2010年にもなったんだから、ネコ型ロボットくらいは創れるんじゃないかなと思うよ。まじで。