反面教師、親の悪口、めんどくさい


 なんかね、ここ数年「これは反面教師にしよう」って心に刻むことがやたらめったら増えたような気がするんだ。やたらめったらね。それが、僕が年をとったせいなのか、物事を冷めた目で見ることが多くなったせいなのか、はたまた、それなりに広い視野を持てるようなったおかげなのかわかんないけどね。もちろん、生活環境が変わって、付き合う人間が変わったせいもあるかもしれないけどね。とにかく「何やってんだよ、コイツら」って常日頃から思ってるような気がしてならないんだ。で、それにいちいち腹を立てててもしょうがないから「これは反面教師にしよう」って心に刻むんだ。



 例えばさ、親の悪口を言う奴ね。「うちのおかんは、朝から晩までずっと喋りっぱなしで、うるさくてしょうがない。人の話もまったく聞かないし、喋ってても話が次から次へと飛躍して、何のことかもわからないし、うんぬん……」とか愚痴ってる奴もね、自分のおかんとまったく同じで、ずっと人の話も聞かないで喋ってるクチなんだよね。「オマエ、自分の悪口言ってんのか?」って。つまりさ、自分の親兄弟の悪い癖ってのは、自分の悪い癖でもあるってことだよね。自分じゃ気付いてないだけで。だから、親の悪口なんて絶対にみっともないことになるから、やめた方がいいってことだよ。


 でね、一番ためになった「反面教師」はね、「めんどくさい」って言葉だね。たとえば、何かの説明を受けてるときに「ここはめんどくさいですが一旦管理画面に戻りまして……」とか「登録がめんどくさいので、コピペでいいです……」とか説明されると、無性に腹が立つんだよね。無性にね。で、その理由が、いちいち登場する「めんどくさい」って言葉のせいだって気づいたときは、背筋が凍ったね。だってさ、自分の口癖のレパートリーのひとつに「めんどくさい」というワードがあるわけだけど、傍で聞いてるとこれほどまでに人を不快にさせるとは思いもよらなかったからね。まじで。他人がいる前で「めんどくさい」って口にしちゃいけないって、強く思ったよ。周囲のテンションを一気に下げる逆バイキルトみたいなもんだよ、まじ。