「休み」を主張することに関して


 僕の会社はシフト制なんだよ。つまりさ、カレンダーで赤文字で書かれてる日でも仕事してたり、黒文字で書かれてる日でも家にいたりするんだよね。なもんで、毎月25日くらいまでに次月のシフト、つまりは個々人の出勤日、公休日を決めなきゃいけないわけさ。で、あらかじめGoogleカレンダー各自の「休み希望日」を記入してもらい、20日過ぎくらいから、やれ、もう今月もこんな時期かとシフトを決める作業にとりかかるわけさ。ちなみに僕がシフト決める係りなんだ。


 で、だよ。これまでの暗黙の了解としては、「どうしても休みたい日」は「休み希望」と入力して、あとの休みの日はシフト担当に任せるってやり方だったんだよね。てか、普通そうだよね。同じ部署に7人も8人もいるわけだから、個々の好き勝手な「休み希望」を全部聞き入れるわけにはいかないからね。もちろん、こんなことわざわざ説明したり発表したりしてないけど、こういう風にシフトを決めてたんだよ、今までは。どうしても休みたい日だけ、あらかじめ記入しといてって。



 でもね、月の決められた日数の公休日すべてを「休み希望」として記入するのがいるだよね。つまりさ、僕がシフトを決める前から、もう自分の休みを全部自分で決めちゃってるってわけさ。まあ、それは新人の中国の人だから、あー、やっぱり外国人だから「主張」の感覚が違うのかな。日本人は奥ゆかしかったり遠慮したりで、なんとなく空気読むけど、中国の人には「希望はできるだけ聞くけど、自分の都合だけで休み決めないでね。全員でバランス良く休めるように決めないといけないし、先輩は誰もここまで休み希望出してないだろ」ってちゃんと説明しないといけないなと思ってて、5分後くらいにカレンダーをリロードしたら、日本人の新人も同じように、すべての休み日を指定してたんだよね。


 で、当然2人の人間が、しかも新人が勝手に休みを希望されても、そんなの全部通らないんだよ。他のメンツの休み回数や連続出勤日数とかと組み合わせるとね。で、どうしても都合がつかないから、その新人呼んで、「休み希望」出してるけどずらしていいか訊いたんだよね。そしたら「じゃあ、その日がダメなら、次の日休みで」とか言うんだよ、しれっと。「次の日休みで」じゃねーよ、おめーが決めるんじゃねーよとか思ったけど、何か予定とか用事あるの、って訊いたら、「別にないですけど、疲れそうなので休んどきたいです」だって。


 確かに「休み」を申請する権利はあるのだろうけど、他のメンバーの都合や先輩や上司への配慮とか、シフトを組む人間への立場ってものを、いちいち説明しないとわかんないのかなと。てか、他の連中見ても「休み希望」なんてせいぜい月に2日くらいなのに、新人でよくもまあこれでもかと「休みたい」と言えるなと。って、そういうの説明したけど、納得いってない顔してたくらいなんだけどね。もとより、僕の考えの方が間違ってるのかなってほど堂々としてたんだよね。「休み希望書けって言われたから書いたのに、なんで怒られないといけないんですか」みたいに。ちなみに君はどっちの主張が正しいと思うかな。


 せいぜい30年ちょっとだが、ここまで生きてきて、それなりに世の中にはいろんなタイプの人間がいるなとわかっていたつもりだけど、まだまだ世の中には、否、それどころか、身のまわりですら変わった人間がいたもんだと感心してしまったよ。ある意味ね。