なぜ中学生の部活の大会が高校で行われるか


 先日、9月に行われる「新人戦のシード校を決める」という名目の大会があったんだよ。参加校が総当りでゲームをして、上位4チームがシード獲得、みたいなね。でね、それは市内のとある私立高校で開催されるってんだよね。これって毎年恒例の大会なんだってさ。僕らのときはなかったけどね。でさ、僕もそうだけど、みんなも疑問に思ったろうけど、なんで中学生のバレーの大会を高校でやるんだよ、って話だよね。高校が主催して、学校を貸して、高校生が審判などのお手伝いもしてるんだけど、たいそうなこったなと思ったわけさ。



 でね、まあとにかく大会の日に高校に行ってみたわけさ。だって、そこが会場だからね。で、僕もはじめて中に入ったわけだけど、とても清潔感あふれる学校なんだよね。学園モノのドラマなんかで見かけるような教室が選手の控え室になってて、体育館から控え室までの廊下から見える中庭なんかも「青春」をにおわせる景色なんだよ。緑があってベンチがあってレンガ造りの歩道があって噴水があって、みたいな。あげく、体育館の横の広場みたいなとこではバトン部なのかチアリーダー部なのかわかんないけど、身体の柔らかそうな女子が、くねくねと踊りながら何かの練習をしてるんだよ。


 でさ、そこで気づいたわけさ。これって学校宣伝の一環なんだろうなって。だってさ、こんなきれいな校舎だったら、たいていの古臭い中学校にいる生徒は、かなりの好印象を持つに決まってるよね。それに普通の中学生は冬の受験本番までに「高校」という場に足を踏み入れることなんてそうそうないだろうから、「一度行ったことがある高校」という安心感は、志望校を決める際に大きな後押しになるはずなんだよね。それに保護者も大勢応援に来るわけだから、家族総勢にピーアールできるわけさ。


 でね、そう考えると、この宣伝営業にはもう一手あったわけだよ。大会の数日前には、この高校のバレー部員が、母校の指導の手伝いをするってんで、去年まで在籍していた中学にやってきて、後輩の指導をするってイベントもあったわけさ。つまりさ、新人戦前の夏休みという、不安感と挑戦心が入り混じる時期の中学生に、「高校」の印象を強く与えるって目的があるんだろうね。実に巧みだなと思ったよ。


 先に、僕の時代はこんな大会なかったって言ったけど、そもそもこの高校も存在してなかったんだよね。というより、あくまで個人的な印象だけど、ぱっとしない女子高だったんだよ。で、いつの間にか男女共学になって、ここ10年くらいで各スポーツで活躍し、知名度や印象も変わり、今では石川県外でも存在感のある学校になってるんだ。学校も、こういったターゲット層に効果的に働きかける営業活動が必要なんだろうね。ただ、頭がイイとか運動で有名ってだけには、そう簡単にはなれないんだろうね。営業しないとダメなんだよ。