吉野家のご飯の熱さに関しての奮闘記


 昔から常々思ってたのだが、吉野屋の牛丼のご飯は熱すぎるのではないだろうか。別に僕は猫舌というわけでもないのだが、アレはどうも度が過ぎていると思う。それこそ漫画に出てくる柔道部員のように、ガツガツとかっさらおうものなら、火の玉でも口の中に入れたような苦悶をあじわうことになる。ということなので、僕は吉野家の牛丼を食べるときは必ずタマゴも一緒に頼み、かけてたべることにしている。タマゴがご飯の熱をやわらげてくれるのだ。そうでもしないと、気持ちよく食べれない。


 で、先日会社の同僚と吉野家に行く機会があったので、上記のような話をしてみた。すると彼は「へぇ」と、どうでもいいような生ぬるい返事をした。多分彼は、吉野家の牛丼のご飯を熱いと思っていないのだろう。しかし、彼はこうも言った「じゃあ、つゆだくにしてる人も、ご飯が熱いと思ってるのかもしれないですね」。なるほど、その手があったか。つゆだくだったらタマゴのようにお金もかからないし、願ったりかなったりだ。客観的な立場の人間は、ときに見事なアイデアを提供してくれる。


 ということがあって、いよいよ吉野家で食事をする気分になったので、吉野家に行ってみた。いつもなら、牛丼並とタマゴを注文するのだが、「牛丼並の、つゆだくで。……あと味噌汁」と今までになかった新オーダーを店員さんに告げた。サプライズだね。つゆだくなんて頼んだのははじめてだ。メニューにものってないタダのものをくれと言うのだから、厚かましいのではないかという羞恥心もあったが、僕はつゆだくを注文したのだ。しかし、我ながらナイスひらめきと思ったのが、味噌汁をオーダーしたことだ。タマゴを控えた代わりに味噌汁。考えてみればタマゴは単なるご飯の熱さに対するクッション剤でしかなく、味だってたいしてしない。同じ50円ならタマゴより味噌汁の方が食事した気分をより高めてくれるはずだ。いいぞいいぞ。これはいい流れだ。世代交代だ。


 とかなんとか考えているうちに、つゆだくの牛丼がきた。もちろん味噌汁も付いてきた。思惑通りだ。


 で、食ってみた。いや、順番が違うな。七味をかけて、紅ショウガも乗せて、割り箸を割って、食ってみた。今日から歴史が変わるやもしれんぞ。わくわくした。


 ……、…………。………………あ、熱い。やっぱ、熱いよ。ご飯が熱い。失敗だ、つゆだく。ちくしょう。と、食べながら考えてみたが、つゆだくと言えど、そのつゆは牛を煮込んでいるつゆなのだから熱いものであるわけだ。若干ならご飯熱をカバーしてくれるが、熱いものは熱い。どうしようもない。やっぱタマゴしかないのだなと痛感したのであった。