メビウスの輪、クラインの壷、ゲーム・オーバー



 岡嶋二人に関しては、だいぶ昔に『99%誘拐』を読んで知ったのだが、その強烈なインパクトが残っていたので、「もう1冊」のつもりで買ってみたのが、この『クラインの壺』。


 少し厚みのある文庫だったので、買ってからも長い間手に取らないでいたが、宮崎を往復する間に一気に読みほした。次世代型の新しいゲームをめぐっての物語だが、驚くほど新鮮であって、かつ、生々しいほどのリアリティはある。


 「あとがき」にも書かれていたが、この作品は1989年に描かれたもので、その時代背景としては、世にドラクエ3が登場した頃なのである。もちろんインターネットなんて存在しない世の中。そんな時代にあって、21世紀の今でも十二分に新鮮さを感じる物語を描いているのだから、これはビビる。まったくビビらざるを得ない。要所要所に安部公房チックなにおいも感じさせる「真」と「虚」に放浪されるという設定には、ぐいぐい引き込まれてしまう。強くおすすめの1冊。


◆岡嶋二人 著『99%の誘拐』<Not Found(2006.02/09)
◆●クラインの壷<●数理科学美術館(日本高速通信内)