Imagine



 『グロテスク』がおもしろかったので、桐野夏生を続けて読んでみることにした。これだけ短い話のわりには、物語に引き込まれていった作品だったような気がする。


【以下ネタバレ注意】


 で、この『残虐記』は、少女が誘拐され監禁されるという話だと聞いた。例の新潟での少女監禁――あの9歳の少女が19歳まで監禁されていたという事件をモチーフにしたものと言われているが、実際には、映画『コレクター』をヒントにしたものとも聞く。まあいずれにせよ、少女監禁ってことだ。なので僕は、監禁シーンを中心に話が進んでいくのかと思ったが、わりとあっさりめに監禁生活からは脱出でき、その後の少女の生活というものががっつり描かれていた。いささか拍子抜けしたのだが、全体的には、「想像」というキーワードを中心とした話で、なかなか読み応えはあったと思う。


 とにかく僕らは、毎日の生活の中で、都合のいいこと悪いこと、ひたすらに想像しながら生きている。ときにそれは楽観的なものであったり、悲観的なものであったり、またときにそれは“読み”と呼ばれるするどいものであったり、“妄想”と言われ品のないものであったりもする。


 でも、「あの人は私のことが好きなのかもしれない」「あいつは、俺のことを影で笑っているだろう」「何だかんだ言って、彼は誰のことも信用していない」などと、いろいろ想像したみたところで、実際に確信を持ってわかることは、少ない。なぜなら、世の中には知らないほうが幸せということだってあるし、そもそも知ることができない事柄だってある。その「真実」と「自分」との距離を埋めるのが「想像」なのだろう。


 もし、僕も何らかの理由で監禁されてしまったとしたら、なぜ監禁されてしまったのかという「真実」と、どうすることもできない現状の「自分」の隙間を埋めるために、精一杯「想像」力を働かせるだろう。


 「想像」するということが、とてもむなしくそして痛々しい行為なのだな、というのが、この作品を読んでの感想である。


◆新潟女性監禁事件の犯罪心理学(新潟少女監禁事件の犯罪心理学