課題として書かされた甲子園のレポートを載せるよ


 「第90回全国高校野球選手権記念大会 夏の甲子園を終えて」


 1995年、第77回全国高校野球選手権大会。そう、僕らが高校3年生を過ごしたあの夏、甲子園には、この年No.1スラッガーとして日本中の注目を一身に浴びた福留孝介がいた。彼は名門PL学園にあって1年の秋から4番に座り、高校生離れのパワーと非凡な野球センスで、全国にその名を轟かせた。


 しかし、その福留率いるPL学園も順々決勝で、福留自身の併殺打により甲子園を去ることとなる。あれから、13年。当時の高校No.1スラッガーはその舞台を海の向こうに求めた。そして、シカゴには100年もの間世界一から遠ざかっているカブスの救世主としての期待を一身に浴びた福留孝介がいた。彼はデビュー戦でセンセーショナルな同点アーチを放ち、アメリカ一熱狂的なシカゴのファンの記憶にその名を刻みつけた。


 福留がシカゴに与えたキーワードは「patient」。「粘り」「忍耐力」という日本人の美徳のひとつとも言える精神力だ。相手投手の改心の一投をファウルでかわし続ける驚異的な「粘り」、そして釣り球には決して手を出さず、悠然と四球を選ぶ「忍耐力」を賞してのものである。「patient」。


 話を戻そう。


 今年の第90回全国高校野球選手権記念大会でも、「patient」がひとつのキーワードになっていた。1回戦第1試合 駒大岩見沢(北北海道)8 ― 6 下関工(山口)1回戦第3試合 智弁学園(奈良)5 ― 4 近江(滋賀)1回戦第2試合 本荘(秋田)3 ― 4 鳴門工(徳島)第4試合1回戦 浦和学院(南埼玉) 5 ― 6 横浜(南神奈川)2回戦第2試合 智弁学園(奈良) 4 ― 5 報徳学園(東兵庫)3回戦第3試合 東邦(西愛知) 5 ― 7 大阪桐蔭(北大阪)など、終盤での大逆転、また逆転の可能性を予感させる驚異的な「粘り」をみせるチーム。そして、1回戦第1試合 常総学院(茨城) 5 ― 13 関東一(東東京)2回戦第4試合 浦添商(沖縄) 12 ― 9 千葉経大付(西千葉)3回戦第2試合 常葉菊川(静岡) 11 ― 9 倉敷商(岡山)第3回戦3試合 駒大岩見沢(北北海道) 3 ― 15 智弁和歌山(和歌山)準々決勝第1試合 智弁和歌山(和歌山) 10 ― 13 常葉菊川(静岡)準決勝第1試合 浦添商(沖縄) 4 ― 9 常葉菊川(静岡)決勝 常葉菊川(静岡) 0 ― 17 大阪桐蔭(北大阪)など、1イニングに大量失点を喫するという「忍耐力」の欠落が露呈したチーム。


 つまり甲子園で得た感動は「粘り」であり、感じた懸念点は「忍耐力」のなさ、ということになる。決してあきらめないという高校球児伝統のスタイルは今もなお生きている一方、自分(達)のスタイルが崩されたときに立て直す力が欠落していた。そう感じたのが、この90回大会だ。


 科学的なアプローチやケアが発達し、効率化が目覚しい高校野球。しかし、その傍らで何か取りこぼしているものがあるのかもしれない。パワーやスピードも大きな魅力となる。しかし、豪快なフルスイングと快速球は、早熟な個のスター選手しか育てない。世界を舞台に活躍できるのは、「粘り」と「忍耐力」を兼ね備えたプレイヤー、そしてチームこそである。


 日本の野球の可能性は「patient」にあるのではないだろうか。


※参考
◆夏の甲子園 第90回全国高校野球選手権記念大会asahi.com朝日新聞社
◆福留がファン投票2位! 夢の球宴出場の期待と不安<小グマのつぶやき from シカゴ vol.11<スポーツナビ (2008.06/05)