ホールデン・コールフィールドに告ぐ



キャッチャー・イン・ザ・ライ』J.D. サリンジャー


 いやね、こんなびっくりしたことは今年一番だよ。まじ、心臓が止まるかと思ったくらいなんだ。


 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。これ1冊読むのにまるまる1ヶ月もかかったんだぜ。1ヶ月まるまるね。しかも、野崎訳の『ライ麦畑でつかまえて』は3回以上読んでるし、村上訳もこれで読むのは3回目で、もう全文を暗記してるって言ってもいいくらい、話の筋は頭に入っちゃってるのにね。


 まあ、朝晩の通勤電車の時間が僕の読書時間だったわけだけど、それがまるまるなくなったってのが、一番の理由だけどね。でもそんなことは言い訳だけどね。本は読んだほうがいいね。たとえ君がどんな環境で生活することになったとしてもね。うん。僕の言ってることは間違ってるかな。まあ、間違っていたとしても、悪いことを言ってるわけじゃないと思うんだよね。


 とにかくだね。僕はこの本を東京を出る少し前から読みはじめたんだ。東京で最後に読むのは『ノルウェイの森』で金沢に帰ってきて最初に読むのは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』って決めてたんだ、なんとなくだけどね。夏くらいにそう考えたんだと思うな、多分だけど。つまりだね、こういうことなんだよ。生活の環境ががらりと変わるその前後の期間は、僕がこれまでに何度も何度も読み返して、そのたびにいわゆるダークプレイスを僕に感じさせてくれた物語を読むことで、通り過ぎようって考えたわけさ。悪くないだろ。うん。今でも悪くないと思っている。ただ、時間がかかり過ぎた点は誤算だったけどね。


 とにかくだね。『キャッチャー〜』を読み終えたことは僕にとってひとつの区切りとも言えるわけだよ。クリスマスが近ければもっとそれっぽかったのかもしれないけどね。