TOKYOモンスター


 今は、2月19日の午前1時半なわけで、まあもしかすると18日の25時半と言った方がピンとくるかもしれないけど、とにかく今、NHK沸騰都市」最終回の再放送を無事見終わったところなんだ。最終回は「東京」にスポットが当てられてたんだよ。月曜日のレギュラー放送時は、ユニコーンが出演するスマスマを見てたから、この再放送で絶対見ておこうと思ったんだよね。


 まず僕と東京の馴れ初めを説明しとくかな。僕はね、大学進学にあたって、金沢は出たかったけど、東京になんて行きたくなかったんだよね。京都に行きたかったんだよ、同志社にね。特に理由はないけど。でも、何故か東京の大学に受かり、どうしようかと予備校の先生に相談してみたんだ。すると「絶対に東京に行った方がいい。そこには、日本全国からありとあらゆる人間が、これでもか、これでもか、これでもかぁぁぁ、というほど集まってくる。そこから受ける刺激は関西のどんな大学も、東京の大学、ましてや六大学にはとうてい敵わない。絶対に東京に行った方がいい」なんてマジに語ってきたことを、どんな重要な英単語よりもしっかり覚えているね。そして事実その通りだったこともね。


 僕が東京で暮らした最後の日から数えて3日前に、成田空港から新宿まで高速バスで移動したことがあったんだ。ずいぶん長い乗車時間で退屈だったけど、ディズニーランドを越えたあたりから、窓の外の景色が一変するんだよ。脳細胞にダイレクトに飛び込んでくるようなすばらしい夜景と、複雑な迷路のように交差する道路、そしてその周辺でうごめく人、ヒト、ひと、hito……。この都市は生きている。生きて、意思を持って動いている。ヒトは細胞であり、灯りはその存在の強さを主張するパワーだ。そんな風に思えたんだ。下手な遊園地のアトラクションや、制作費ばかりかかった映画なんかより、よっぽどすばらしかった。ブラボーと拍手してやりたいくらいだったね。最後にふさわしい、どうもありがとう、って意味でね。


 2012年に東京スカイツリーが完成し、渋谷の都市開発もはじまるか完了するかするらしい。2025年にはリニア新幹線も開通するのだとか。というか、そんな遠い未来ではなく、もう今現状でも、東京は、僕の知らない都市になっているんだろうなって思うよ。あの都市のエネルギーというものは、地底のマグマなんかよりもずっと熱い気がするんだ。まじな話ね。だってさ、東京はモンスターなんだよ。膨張しようという意思を持ったモンスターね。


 最後に、この番組で印象的だったセリフを紹介しとくよ。序盤で登場した小学校の校長先生の言葉なんだ。新開発で誕生した豊洲の小学校なんだけど、「この子ども達は、この豊洲が故郷になる」とか言うんだよ。まあ、当然なわけだが、僕は間一髪、轢かれそうになった車をかわしたような、ぞくぞくっとした気持ちになったね。確かに東京から僕が学んだことや、得たものは果てしなくでかい。自分のキャパシティが大きく広がったのは、東京で暮らしたからこそだろうけど、自分の遺伝子に、東京を故郷と思って欲しくない、そんな風に考え出したのは、別にここ1〜2年の話じゃないんだよね。でも東京という都市は僕にとって何だったんだろうか。そしてこれからは、どう向き合っていけばいいのだろうか。その答えはそう簡単に出そうにないね。


◆NHKスペシャル|沸騰都市(全8回)