「たまたまプロ野球界に入れただけの人がほとんど」



『現役力』工藤 公康


 WBCの栄光のニュースもやっと落ち着いてきたところで、この本を見つけたんだ。もし、この男の全盛期時代にWBCがあったら、どれくらい活躍していただろうかな、そんなことを思いながら買ってみたよ。


 プロ野球選手というのは、誰も彼も向上心が強く、野心に満ち溢れていて、貪欲に身体を鍛えているものだと思っていたのだが、どうもそうとは限らないようだね。まあ、カッコよくいえば、誰もがプライドが高いため、自分の信念や哲学をまげないわけさ。頑固で謙虚さがないんで、失敗を他の原因のせいにしたり、他人のアドバイスも都合の悪いことは聞かないという、まあかなりめんどくさい存在なんだなって感じたよ、この本読んでるとね。


 実際、プロに入る人間なんて、運動神経の塊と根性の魂だけで生きていけると思い込んでいるんだろうけど、実際はそうじゃないんだよね。それくらいすでに社会に出てる僕らのような人間ならわかると思うけどさ。学ぶ姿勢であったり、凹まないタフさであったり、そして何より考えるという癖が、やっぱり大事なんだよね。これは、この世の中自体がそういう風にできているんだよ。まじめな話。だから、アスリートであっても同じなんだろうね。でも、野球ばっかりやってスターやってた人間がそれに気付くかどうかといわれれば微妙なとこなんだよ。もし僕に中田翔大田泰示ばりの才能があり、ずっとちやほやされて育ってきたら、誰のアドバイスなんかも聞くもんかって思うもん。君だってそうだろ。学んだり、考えたりする必要ないって思うもん。俺が感じたことが絶対正しいってね。


 その点、現役最年長、現役最多勝利数を誇る工藤投手は、プロ入り後、早い段階でその「勘違い」に気付いて、プロ世界で生き延びる道を根気強く今でも模索し続けているわけさ。それが「現役力」だってことを言ってるわけだね。まあ、それプラス工藤流の若手や子どもへの「指導論」という色も強かった気もするな。


 2009年2月に出たホットな新書だから、開幕まで1週間、今のうちに読んでおくといいと思うよ。まあ特に目新しいことは書かれてないけど、あの西武時代の「やんちゃ坊主、工藤」を見ている僕にとっては、「工藤も大人になったな」とおおいに感心したよ。まあ僕なんかよりずっと年上の人だけどね。