ボツった投書を載せるよ

 六月十七日の「時鐘」より。大阪の高校生殺人事件は、男女の三角関係から起こった悲惨な事件であるが、これは夏目漱石の「こころ」、向田邦子「あ・うん」でも描かれた「文学の永遠のテーマ」とし、主人公と同じ目線で悩み、苦しむ「疑似体験」があれば、この少年たちも犯行に至る前に思い留まるものがあったのではないかという見解に、共感した。青春期の生き方は文学から学べばよい。必ずそこには重要なヒントが詰まっているのだから。


 インターネットで誰もが意見や主張を論じられる世の中であるが、本物の「名作」が持つパワーというものは、大きく、重い。ましてや明治、大正、昭和と受け継がれてきている物語こそ、その価値を再認識すべき時期だと思う。


 今年の六月十九日は太宰の生誕百周年となる。「走れメロス」から友情を、「人間失格」から生きるということ、今一度考えてみるチャンスではないだろうか。もちろん、大人である私たちも。


※追記:22日北國新聞朝刊「地鳴り」に掲載されますた。