「完了」と「未完了」の間に



『究極の勝利』清宮克幸


 僕が尊敬する人物の一人に清宮克幸氏がいるんだ。ラグビーの監督だね。こういう男臭い、熱い監督ってのは自分と正反対の部分に属するタイプの人間だから、ある意味興味を惹かれるんだよね。もちろん、野球の野村監督や落合監督のような「静」のタイプに親近感を感じるのだが、バレーの植田監督やこの清宮監督のような「動」の指揮官も魅力的だよね。いあや、まったく清宮ラグビーはエキサイティングだよ。いや、失敬、アルティメット・クラッシュだよね。うん、こんなに興奮することはなかなかないよ。まじ。正月の大いなる楽しみのひとつだったよ。


 早稲田時代の奮闘記が書かれているわけだが、学生にとって20歳を跨ぐ大学生の頃に、これだけひとつのスポーツに没頭したという事実は、この上ない財産だろうね。クサイことをいうようだけど。こういうのを読んだり聞いたりすると、僕もそれなりにスポーツを続ければよかったなと後悔しちまうよ、まったく。でもまあ続けていても、どこかで挫折して、「もう二度と野球なんてやるもんか」とトラウマになったろうから、続けないで、今さらのんびり草野球とか草ジョギングやってる程度がちょうどいいんだろうけどね、僕の性格を考えると。


 まあとにかくね、この本のなかでひとつジーンとしびれたことがあるんだ。てか、ひとつといわず、しびれた語録はたくさんあるわけだが、とりわけしびれたエピソードを紹介するよ。それは「完了」と「未完了」に関して触れている部分だね。これは君もよく覚えておくといいよ。

「世の中には理不尽なことがたくさんある。もちろん、それを本人の努力や苦悩することで変えていくことは大切だ。しかし、努力によって変化しない問題に対して、『これはもう終わり』とピリオドを打つ、すなわち『完了』できるかどうか。それによって、その先の考え方が変わるんだ」


 つまり、「完了」とは努力しても変えられないこと。「未完了」とは努力すれば変えられること。そしていつもまでも「完了」を引きずっていても人生にプラスになることなんてない、とかいうわけさ。これにはまいったね。さすが清宮監督だよ。これからの人生、君も「完了」と「未完了」の線引きをしっかりと意識して生きていくことをおすすめするよ。まじ。