社会人、プロフェッショナル、子ども



『プロフェッショナル』仁志敏久


 僕はね、仁志の何が好きかっていたらね、ご存知あのビッグ・マウスよろしく生意気そうなところもはもちろん、小柄ながらもパンチ力のあるそのプレー・スタイルだね。まあただ、やっぱり巨人を出たということろが大きいかな。あのまま巨人に居続けていると、昔はぶいぶいいってたけど今はからきしダメな奴ってイメージだったかもしれないけどね。とにかく今は、もうひと踏ん張りしてほしい選手の筆頭だね。


 仁志は、1995年、高校生スラッガー福留の近鉄入団拒否が話題になった年に、ドラフト2位で巨人に指名されてるんだ。常総学院早稲田日本生命という超エリート・コースを歩んでね。で、この本では、その名門・伝統チームでプレーした野球人生を振り返ってるわけなんだけど、社会人野球に対する文章がとても熱く感じたんだよ。本の構成上はね、恩師と仰ぐ木内監督のエピソードや常総学院時代に関する部分に多くのページを割いているんだけど、「たった2年だが社会人を経験してよかった」という内容に、一番の「パワー」を感じたんだ。思えば野茂の話を読んでるときも一緒なんだよ。野茂も何かにつれて社会人野球を応援する姿勢をみせるよね。それと同じだと感じたよ。


 でね、思ったんだけど、プロ野球選手ってのは、スポーツ界でもなかなか選手寿命が長い部類に入ると思うんだ。40歳を超えて一線で活躍する選手もそうそうめずらしくはないからね。でね、そう思うとさ、高校野球でちょっとくらい活躍したくらいでプロ野球の世界に入るのって、なかなかリスキーなんじゃないかなって思ったりしたんだ。リスキーってのは、その選手の野球人生ってことじゃなくて、その人自身の人生にとってってことだよ。もっともっといろんな環境で野球以外の勉強をしたり、世の中のルールを吸収したり、誰彼ともなく遊んだりすることってすこぶる重要なはずなんだ。そういう経験ができるなら、たった2年や4年、プロ入りが遅れたからってどうってことないんじゃないかなって。そういえば、落合も新人時代を振り返って、俺は社会人を経験してるから、まわりのコーチ陣がごちゃごちゃ言うことに耐えられたし、どう対処していいかもわかっていた、みたいなことも言ってたしね。


 僕らは、マー君とかダル君とか光の部分しか見えてないから気づかないかもしれないけど、18歳でいきなりプロフェッショナルの世界に入るのはどれだけ大変なことか、社会人を何年も経験してわかってきたような気がするよ。とはいえもちろん、今年も数多くの高校生が、ある意味まだ子どものまま、プロの世界に入るわけだけどね。


◆ドラフト日本野球機構オフィシャルサイト