落書き


 アンコールってやつで演奏したんだよ。


 この「落書き」って曲も、先の2曲同様ちゃんとスタジオでレコーディングをして、そのCDの1曲目に持ってきた当時のパワープッシュ・ナンバーなんだ。



 で、このレコーディングをする少し前くらいから、僕は代々木にあるマックミュージックスクールってとこに通ってベースのいろはを習ってたんだよね。それなりの時間と金をかけてレコーディングするから、これまでの独学じゃだめだなと思ったからだよ。でもどうやってこの学校を見つけて、どうして当時上石神井に住んでた僕が代々木なんかに通うことにして、また週にどれくらいのペースで学校に行ってたのか、費用はいくらかかったのかまったく覚えてないんだ。でもとにかく代々木のマックミュージックスクールってトコに通ってたんだよ。


 で、そこは先生とマンツーの個人レッスンというスタンスだったんだ。で、最初にちょっと弾いてみたあとに、「あーもう全然だめだね。こんなんでレコーディングしたって、アマチュアの今ならいいけど、もしプロになったとしても、ジャケット写真の撮影のときだけ呼ばれて、演奏するのはスタジオミュージシャンみたいな扱いだろうね」みたいなことをガツンと言われたんだ。


 んで、「リズムを刻むとは?」みたいな根本的な部分を1からリメイクしたんだよ。あとね、そのときアドバイスされたことで、今でも僕の心に色濃く残っている言葉があるだよ、「どんなに演奏中に熱くなってもいいけど、頭のどこかで冷静にクールな部分を残しておかなきゃいけない。プロのミュージシャンはみんなそれをやってる」「音楽ってのは、器用に指が動けばいいってワケじゃないんだよ。その人がこれまでどんな経験をしてどんな人生を送ってきたかを演奏に滲み出してやんないといけないだよ。だから俺がたとえ100年必死で練習したって、ジャコパスのような演奏はできないね。彼の人生ってのは壮絶で誰にも真似できない。だから評価されてるんだよ」とかね。



 今思えばだけど、この学校で、この先生(名前も忘れたけど)にレッスンを受けたことで、これまでとは違ってまじめに物事を考えるようになったような気がするね。何事にもまじめに取り組むってのは良いことだよ。高校とかの部活だって、挨拶をするとか、先輩を立てるとか、目標を向かって努力するみたいな考え方は、部活だけじゃなくてその後の生き方にも影響を与えるように、バンドだって社会的には一見ろくでなしの集まりみたいなイメージだろうけど、それなりに本気出してとっかかれば、その後生きてく上での肥やしになることはたくさんあるわけさ。


 CDが完成して、先生に聴かせたら「思ってたよりも全然いいね。これくらい弾けるとは思ってなかったよ」というような評価をもらったんだ。だから、僕としては「ああ、こういう演奏をすればいいんだな」という大きな自信になった思い出だね。でも、このスクールにはCDが完成したあとも通っていたけど、バンドが解散してからいつの間にかフェイドアウトして行かなくなっちまったね。


■落書き【NOBLE FLEA】1999.09/02 (5)


◆マックミュージックスクール東京本校