好き嫌いを分ける「きっかけ」


 歳をとるとね、味覚って変わってくるよね。つまりさ、昔嫌いだったり苦手だったりしたものが、食べられるようになったり、むしろ好きになったりとかね。僕が22歳くらいのとき、バイト先の28歳の人がそういうようなことを言ってて、よくよく思い出すんだよね。そういうことってのは、歳をとると味覚が変わるってことだよ。ちょっとした小皿で出されたちょっとした料理をちょっとずつ摘まんで食べるってのが、おいしいって思うようになるんだよねとか言ってたね。まあ、君もいい歳なんだからわかると思うけどな。



 てなことでね、僕が歳を食うにつれていつの間にか食べられるようになったり、進んで食べるようになった料理をまとめてみたんだ。実はドラフト外入団だけど、気づいたら一流プレーヤーという元西武の秋山のような出世フードのことだよ。

  • レバ刺し…もともとレバーなんて食べられなかったけど、草野球をはじめたときの最初の飲み会で目の前にいた人に薦められ、断れないのでしょうがなく食べてみたら美味だったんだ。以来革命的な好物になったね
  • 茶碗蒸し…「食わず嫌い」に落合監督が出てて「好き」な食べ物として食してるのを見てから、僕も好きになることにしたんだ
  • カニ味噌…これは話すと長くなるからまたいつか
  • ウニ…いつか親と寿司屋さんに行ったとき、「とりあえず“ウニ”と言ってみたい」というだけの理由で注文してみたら悪くなかったんだ
  • イクラ…ただしょっぱいだけってイメージだったけど、いつぞやのクリスマスに和民だか魚民だかで「鮭イクラチャーハン」を頼んだら、とても美味しくて、以来食べられるようになったんだ。そのときはパックをもらって持ち帰った記憶があるね。このチャーハンを
  • 加賀野菜の天ぷら…金沢の居酒屋でよく見かけるんだ。ここ3〜4年の話だけど、こういう郷土料理を進んでオーダーして食べるようになったね。食べたいから食べるというよりも、食べておかなくちゃいけないから食べるみたいな感覚だね。必ずツアーグッズのTシャツを着てアンコールに登場するバンドマンのように
  • コーヒー…学生の頃は紅茶しか飲まなかったけど、仕事なんかで「疲れた」と感じるとコーヒーを飲むことで浄化しようとするようになったね、いつの頃からか。濃いコーヒーでグッと重みがあるテイストが良いね。ガツンとこないとコーヒーじゃない、みたいな。元々コーヒーにはおっさんぽいイメージがあって敬遠してたんだけど、果たしておっさんになったから飲むようになったわけなんだろうね


 こうして並べてみて気付いたけど、変化には必ず「きっかけ」ってもんがあるんだよね。つまりさ、そういう「きっかけ」が多ければ多いほど、豊かな人生を送ってるってことじゃないかな。「きっかけ」がないってことは、たいした価値観の変化もなく、新しい発見もないわけで、そんな人生ってのは「一貫してる」「ブレない」「変わらない」というプラスイメージよりも、「つまらない」というマイナス要素が優った生き方だと思うんだよ。君もさ、食べ物の好き嫌いの遍歴をおさらいしがてら、これまでの半生を振り返ってみたらいいと思うよ。どうせ連休っていっても、暇なんだろうからさ。