『ドラことば』感想


ドラことば

ドラことば

価格:1,260円(税込、送料別)


 なんとなくタイトルというか、企画に惹かれて買ったけど、内容は薄っぺらいような気がしたね。正直な話ね。どう薄っぺらいかというと、同じことを何回も言ってるし、同じシーンが何回も登場してるんだ。こういうの、ちょっとがっかりするよね。「またかよ」ってね。「さっきも見たよ、このコマ」ってね。


 でもね、最後にあった藤本大先生の御言葉には掛け値なしで感動したよ。やっぱ大先生の言うことは違うね。次に引用する「藤本ことば」は、僕が個人的にここ最近、いろんなトコで見たり聞いたりして「こういう考え方も大事だな」と感じていたものと合致するんだよね。それを今から30年以上前に藤本大先生もご指摘になられてたなんて、さすがだと思ったよ。まじ、君もこういうことをさらりと言ってのける御人をたくさん知っておくべきだと思うよ。この言葉に出逢えただけでもこの本を買った価値があったなと思えたほどだね。

 (藤本家の子どもたちに)最低、身につけてほしいのは、硬直しない柔軟な考え方です。一面的にしか物事を見られない。判断できない。そんな人間だけにはなって欲しくない。そのための一つの方法として、乱読させています。いわゆる良書に限りません。世の中には、様々な世界があり、色々な人たちがいて、それぞれ違った考え方、生き方をしているのだということ。それを分かってほしいと思うのです。
『小学三年生』1978年8月号(小学館

 「エリート」、「落ちこぼれ」という大まかな分類で人を片づけたりしないで、ひとりひとりが個性を持った人間だという目で見守ってやれば、必ずどこかいいところとか、伸びる部分とかいうものがきっと見つかるんじゃないかと、そう思うんです。
1980年「NHK お母さんの勉強室」講演

 人気まんがを、どうやってかいたらいいか。そんなことが一言で言えたら苦労はしないのですが、ただひとつ言えるのは、普通の人であるべきだ、ということです。(中略)かたよったものの見方や考え方をする人は、大勢の共感を得ることはできない。だから、まず最初に普通の人であれ、というのはそういう意味なのです。
 そのうえで、ただ本当に普通の人であったのでは、まんがなんてものはかけません。プラスアルファ――なにか自分だけの世界を、ひとつは持っているべきである。それは、必ずしもまんがに直結したものでなくてもいいのです。釣りが上手であるとか、模型作りに熱中するとか、SF小説を読みあさるとか。そういったことが、その人の奥行きになって、しごくありふれたものにプラスして、何か個性みたいなものが生まれてくるんじゃないか、と思うのです。
藤子・F・不二雄自選集 ドラえもん』上巻(小学館


 ドラえもんというのは、20世紀最大の児童メタファーであり、児童哲学だね。うん、ドラえもんと共に育った僕は幸運だったと思うよ。真面目な話ね。