君には23人の同志がいるか?


 年末の開いた時間に、どういうわけか久しぶりにウイイレをしたくなったんだよ。ウイイレってのはPSPのサッカー・ゲームのことだけどね。でね、どうせなら、本田△とかトゥーリオとかのメンバーを操作してゲームするのではなくて、自分の友達連中をエディット選手として登録して、気心知れたみんなでわいわいW杯を制覇しようとか思ったわけだよ。エディット選手ってのは、自分の好き勝手に選手を作成して、ゲームに参加させるプレーヤーのことだよ。


 でさ、自分のエディット選手は、スピードとスタミナが世界レベルのフォワードとしてもうすでに登録してあるんだよね。ので、あとのメンバーをせっせと登録していったわけさ。その中で、サッカー経験のある奴は、中心選手として能力を高く設定して(といっても、そいつがどのポジションをやってて、どんな選手だったか知らないんだけどね)、サッカーやったことのない奴は、ドリブルが上手いとかパスが正確とか適当な長所をつくったり、こいつは足が早いからサイドバックにしようとか、わりかし楽しみながらガシガシ登録してったんだ。でもさ、問題が発生するわけさ。



 10人くらいは、ポンポンと友達が思いつくんだよ。学生時代よくつるんでた奴とか、今でも定期的に逢ってる奴とかね。でもね、サッカーW杯のベンチ入りメンバーは全部で23人いるんだよね。だから、23人全部を自分の知り合いにしようとすると、ちょっとした骨なんだよ。行き詰まるわけさ。携帯のアドレス帳を開けば当然23人くらいは知り合いがいるわけだけど、一緒なチームのメンバーとして戦おう! 世界の頂点取るぞ! エイエイオー! ってのには、ちょっと違うなって人間もいるわけだからね。例えば会社の上司とか、連絡先は知ってるけどそんなに仲良くない人とか、もう随分長いこと逢ってない人間とかね。しかもサッカー日本代表ってことで、女は入れられないんだよ。となるとさ、これまで、それなりの付き合いをしてきて、例え架空のゲームの中とはいえ、自分がこいつらと一緒に何かを成し遂げようと思える同士を23人列挙するのに結構苦労するってわけさ。俺って友達少ないのかな、って。



 大人になると、「知人」には、ビジネスプライベートの2つのカテゴリーができて、そしてプライベートの中でも、家族・親戚といわゆる友人と呼べる連中に分けられると思うんだ。子どもの頃や学生時代は、とにかくこの「友人」ってものだけと繋がってれば良いと僕は思ってたけど、最近は、どっこいビジネス上の人間と過ごす時間が濃くなり、家族の範疇の重要度が増してくるんだよね。でもさ、そんな大人になった今だからこそ、たいした縛りがなく、「ただ楽しむ時間を過ごす」ことだけに限定された「友人」の必要性ってのを感じるようになったね。というのもね、これといった目標もないのに繋がっている「人」ってだけで、ありがたい存在なわけだからね。


 僕らは、いろんな縛りの中で生活を維持していかなくちゃいけないわけさ。自由なんてあんまりないんだよ。だからこそ、普段から、なんの縛りも制限もない友人をたくさん拵えておくことは大切なんだよ。これって、いくら名刺交換をしたところで得られない知り合いだと思うんだ。