明日の練習試合で試したいこと


 2月の頭に1年生大会があるんだ。だから、1年生チームでの練習試合をすることになったんだ。まあ1年生チームっていっても、うちらの場合、部員は2年生1人、1年生6人の全部で7人だから、みんな集まったところでそれが1年生だけのチームなのか、2年生込みのAチームなのか微妙なところなんだけどね。


 てかさ、うちの中学に限らず他の中学校でも今の2年生の男子バレー部員って少ないんだよね。きっとこれは、今の2年生が中学に入学した年の4月に、映画「おっぱいバレー」が公開されたこともあって、敬遠されたスポーツなんだと思うな。「バレー部入るってことは、お前、おっぱい見たいんだな」てなこと言われくないもんな。俺なら他の部に入るよ、そんなちょっかい出させるくらいならね。だから、全国的にも男子バレー部の人口が減ってる学年なんじゃないかな、今の中学2年生って。まあ、そんなこんなでさ、市内の他の中学で、こちらも2年生が1人っていう学校と練習試合をすることになったんだよ。


 ちなみにさ、今の3年生がいた頃はそこそこ強かったわけだけど、今の連中はからきし弱いんだよ。新チームになって、公式戦は1セット、練習試合を含めても3セットくらいしか取ってないんだ。中学のバレーは2セット取らないと勝てないんだけどね。まあ負の要因はいろいろあるけど、とにかく結果が出てないんだ。てなことで、自分が指導者として何をやろうとして、そしてどうなったのか記録しておかないといけないなと思ったんだ。ただでさえ、数少ない出席回数なんだから、1回1回教える側の目標や意図がまとまってないと、練習に出た意味が薄れるもんね。つーことで、明日の練習試合で試したいことを書いてめとめてみることにしたよ。んで、その結果もまた別途記録していこうと思うんだ。


キャプテンのトレード

 1年生の練習試合ってことで、2年生は基本見学になるはずなんだ。で、ただ見てるくらいなら、他のチームに入ってみようぜ、ってアイデアだよ。つまり、互いのチームの2年生キャプテンをトレードして、違うチームの「一日先輩」とするわけさ。ただ、これは相手校の先生の同意を得ないと実行できないから、ちゃんとこのレンタル移籍のメリットを説明しないといけない。お互い2年生が1人しかいないってことで、1年生が先輩を舐めてる部分は芽生えてると思うんだよね。だから、1日だけでも知らない上級生を持ってくることで、1年連中に緊張感を持ってもらうことが狙いの1つ。また2年生も、いろんな選手に接しておいてアドバイスをする、指示を出す経験を踏んでほしいってのが2つ目の狙い。この1年生メインの練習試合をただぼさっと見てるんじゃなくて、他の学校の試合運びを体験することは、試合以上の勉強になるだろうってことだよ。

ペナルティ

 負けた試合は、相手チームとの得失点差分のダッシュをペナルティとして設けるって塩梅さ。こういうの好きじゃないけど、子どもってのは、なかなか危機感を持ってくれないんだ。いや、まあ大人もそうかもしれないけどね。とにかく、部活の場合は、指導者に対する精神的な畏怖の念ってのが一番の緊張感なんだろうけど、僕は威圧感のあるキャラじゃないから、身体的なダッシュというペナルティを設けることで、プレッシャーをかけようって狙いだよ。また点差が開いても試合を途中で諦めることも減るかなと。ただ一つ気になるのは、実は先週も練習試合があって、僕は仕事だったから途中1時間くらいしか見てないんだけど、僕がいない時間の方がスコア上はいい試合をしてたそうなんだ。僕がいるときは10点くらいしか取れないけど、帰った途端セットを取ったり20点くらい取ったりしたってことだよ。余計なプレッシャーがない方が、のびのびプレーできるのかもしれないけど、プレッシャーのない結果なんて、あまり意味はないだろうから、やっぱりムチの部分は見せておくべきなのかなと思うね。

データ化

 コーチに就任したときに、「とにかくがんばれ」ではなく、「なぜこうすべきか」を理詰めで説明したいという、僕なりのコーチング・スタイルがあったんだよね。ただね、ここ半年くらい、他の中学の試合を見てきて気づいたんだけど、こんな大人な切り口ってのはちょっと違うって気がしてきたんだ。つまりさ、中学生ってのは、データ化できるほど安定した人間じゃないんだよね。気分や調子の浮き沈みが激しいし、ここぞというときに踏ん張る力を持ってない。だから、「とにかくがんばれ」とか「なんでできないんだ」と頭ごなしに叱りつけることの方が絶対的に近道なんだよ。考える余裕やいろんな選択肢を設けさすのではなく、有無も言わさず「やるしかない」という状況に追い込んではじめて、がんばってみる、くらいの未完成な生き物なんだ。それに、データを出しても、それを解釈する知識もないし、どちらかというと、できない言い訳や逃げ道として悪用される懸念もある。など、諸々中学生にとってスコアブックをつけて、データを示すってのはそぐわない気がするんだよね。ただ、やはり人には向き不向きがあって、僕が他の指導者と同じことをやっていても、立場が違い、勝てる気がしないので、誰もやってない武器をつくる必要はあるんだよね。スコアを付けることで、得意不得意を数値化し、「さあやるぞ」というきっかになってくれればと試してみようと思ったんだ。ちなみにスコアは、次のサイトで紹介されていたものをアレンジして使うつもりさ。
◆[中学校部活指導]子どもたちが互いに協力し,主体的に考える部活動指導に関する研究

集中のタイミング

 僕の行ってた高校はサッカー部が強かったんだけど、応援に行ったりなんかすると、ピンチの場面で「集中ー!」とみんなが叫んでたんだ。相手がコーナーキックを蹴る場面とかでね。で、ツエーゲンの試合とか代表戦をパブリックで観ててもやっぱり同じようなシーンで「集中ー!」と激を飛ばす奴がいるんだ。これって、サッカーというスポーツの文化なのかもしれないけど、すごくいい決め事だと思うんだよね。というのも、試合の最中、ずっと集中力をマックスに持続するってことは難しいだろうから、「どこでマックスにすべきか」をチームで共有し、ぐっとチームの結束力を高める必要ってすごく大切なはずなんだ。もちろん、ピンチの場面なんて、見てりゃ誰でもわかることだけど、それを声に出して確認しあうってことに意味があって、どのスポーツでも一番シンプルでかつ難しいチームプレーだと思うね。特に精神的に脆い中学生の場合はなおさらだよ。ちょうどアジアカップで盛り上がってる最中だから、サッカーでやってることを真似てみるようにと教えようと思うんだ。

約束

 最近読んだイチローの本に「自信とは、自分との約束を守ることからしか生まれない」というような言葉があったんだよね。だから、個々の選手に、今日の試合で意識すべき約束事を指示して、守らせるようにしたいんだ。彼らは、自分たちは「弱い」って確固たる自覚があるから、まずそれを崩さないと話にならないんだよね。だから、どんな小さな約束でもいいから、きちんと守ることで自信をつけてほしいんだよ。


 さて、明日が楽しみだよ。ちなみに、この時期の体育館って南極の果てくらい寒いんだけどね。体育館舞台の垂れ幕がオーロラに見えることすらあるくらいなんだ。