部活をどこでするか?


 先日の練習試合の試合前に、相手校の先生と雑談をしてたときに出た話題で、ふと思ったことがあったんだ。


 まあその前にちょっと説明させてもらうけど、金沢近郊にいくつかある小学生のバレー・チームでバレーをしてた子は「ジュニア」とか「ジュニア上がり」とか呼ばれてるんだ。で、来年、うちの中学にも「ジュニア」の子が入学するって聞いてたんだ。だから、今は部員が少ないけど、4月からは即戦力の補強も期待できるなとか思ってたんだよね。でも、その先生が言うには、「お宅のところにいくはずのジュニアの子は○○中に行くみたいですね」とか言うんだよ。


 いつの頃からか、生徒が、てか小学生が自分の進む中学校を選択できるようになって、通学区域外の学校に入学できるようになったことは君も知ってるよね。受験とかそういうのじゃなくて、主に部活とか勉強を理由に他の中学に行くっていう「中学校学校選択制ってやつだよ。金八先生でやってるのを見て知ったんだけど、金沢では2006年度の入学者からこういうのが実施されてたんだよね。


 つまりさ、来年うちの中学に来るはずの貴重な経験者は、本格的にバレーをするために、今年急に弱くなった学区内の中学ではなく、有名な指導者のいる隣接の中学に行くことにしたってことだよ。



 ストレートに「獲られた」というショックがあったんだ。もちろんスカウトしたとかそういうんじゃないだろうけどね。でも、ああ、中学からこんな生徒の一極集中とかやってんのかよ、って思ったね。実際、その有名な先生の元には、今年も他所の学区から何人かの有望な1年生が入学してて、急に強くなったんだ。また、他の地域でも「ジュニア」の子が、はやり近隣の強豪校というか、有名な指導者のいる学校にわざわざ転入してるんだよね。もうこうなってくると、有名な先生がいるから強いのか、有能な選手が集まってくるから有名な先生と呼ばれるようになるのか、わかんないような気すらしてきたよ。


 優秀な選手が高校進学時に、県外の有名校に出てくってのはよく聞くけど、中学でもこんなんなってのかと、カルチャー・ショックだったね。これだと、「ジュニア」からのエリートが集結した学校と、中学からバレーをはじめた平凡な学校の力の差が広がって、弱い学校はちょっとやそっとじゃ勝ってこないから、モチベーションも下がって仕舞いには廃部になるってのが目に見えてるわな。実際問題、大会のトーナメントなんかを見ると、僕が中学のときより学校数が格段に減ってるんだけど、少子化だけの問題じゃないような気がしたわけさ。野球やサッカーのようなメジャースポーツではなく、バレーのようなメジャーに成り切れないスポーツだから、このままプレーヤー人口が減少して、先細りになってしまうような気がするんだよ。


 でもね、一方で、親の立場で考えてみると、どうせなら我が子は厳しく鍛えられる部活に入れたいよね。ましてや、小学校から取り組んでるスポーツならなおさらだよ。また、それが隣くらいの学区であれば、悩むまでもなく、通わせるだろうね。何が正解なのかわかんなくなってきたよ。


 ちなみにね、うちの学校に来ると思ってた「ジュニア」の子が、実際に行く○○中学の先生ってのは、僕の恩師なんだよね。だから、こんな文句は口が裂けても言えないけどね。


◆金沢市立中学校学校選択制の概要