最後の挨拶で必要なこと


 最後の挨拶という形で、部活に行ってきたんだ。


 で、勝手な思い込みなのだが、これまで僕の元に入ってきたいろいろな情報を整理すると、新任の顧問の先生は、僕が引き続き部活に顔を出すことを迷惑に思ってるような空気を感じるんだよね。生徒たちは、すでに新体制でスタート切ってるわけだから、前の人間が今更どうもこうもないだろってね。せっかく切り替えたところに、いらん顔出すなって、そんな風に感じてたんだ。もちろん真偽のほどはわからないよ。で、挨拶する場も必要もないというようなことを聞いていたのだけど、勝手に学校に出向いて、生徒は抜きにしてでも職員室かどこかで新任の顧問と前の先生に挨拶して帰ろうと思ってたんだ。


 で、職員室に行くと、去年までの先生(今年からは、これまた経験のないサッカー部に配属されたそうな)がいたので、昨年度はお世話になりましたと礼を言ったわけさ。でも新任の顧問は会議かなんかで今はいないらしいので、じゃあもうそれで帰ろうと思っていたんだよ。でもまあ、前任の先生は「体育館に行って直接挨拶した方が子ども達も納得すると思いますよ」と言ってくれたので、一緒に体育館に顔を出すことにしたんだ。なもんで、なんとなくの流れの中で、全員の前で全員に対して喋っただけだったんだよね。でね、ここで大事な部分ってのは、区切りとしての挨拶うんぬんじゃなくて、ある程度の時間をかけて、「今どういう練習してる?」とか「どんなチームになりそう?」とか「ポジション変わった奴いるか?」とかの適当な質問でいいから会話をすべきだったってことだろうね。そして個々人に個別のメッセージを投げかけてあげるべきだったなと思うんだ。個々人に対して「何組になった?」とか「休み明けのテストってあるのか?」とか、何でもいいから話しかけてやるべきだったんだ。「春季大会で1勝できるように必至に練習してください」とか、そんなこと言われなくてもわかってることだしね。


 もちろん僕も、個々人へのメッセージを考えてなかったわけじゃないけど、もうすでに面識のない顧問の先生が受け持ってる部活となってるわけなので、その場であれこれ講釈を垂れることに、どうも負い目を感じていたから、早めに切り上げたというような格好になったんだよね。だから、生徒からはあれだけやってきて、これで最後かという印象を与えてしまってたのではないかなと後悔してるけど、まあ今更どうしようもないんだけどね。こういうことろがまた僕の詰めの甘いところなんだけどけどね。



 で、最後に気づいたというか、再認識したことがあるんだよね。セッターの奴が少し背がでかくなってる気がしたから、「お前でかくなったな」とか言ってたんだけど、確かに全員ががっしりした印象があったんだよね。ほんの2週間くらいで、たくましくなってるんだ。


 で、実は秋くらいから主に冬休みくらいにかけて、僕の他にもコーチが来てたんだ。その方は石川県のバレーボール協会の理事長という大御所なんだけど、理事長が指導しはじめたときも、全員ががっしりした身体つきになり、目付きも変わって、オーラが出てたって記憶があるんだよね。ああ、コイツらしごかれてるな、てか、しごかれるとガラリと変わるもんだなと思ったことを覚えてるね。でね、僕はどちらかというと、理屈や考え方を説明し、チェックをするって練習の進め方だったんだ。自分では「桑田方式」って思ってるんだけどね。でもね、何度もここに書いてるけど、中学生は、理屈はわかっても、それ相応の反復練習と基礎トレーニングしないと身体が覚えてくれないんだ。で、できないからやめるって流れに逃げちゃうんだよ。すると、結局サボり癖がついて、体格ももやしみたいなままだし、運動能力も上がらないってわけさ。やっぱり中学生の部活は、動かさないといけなんだなと、そもそも中学生のこの時期の心・身体の成長の度合いなんて一生のうちでももっとも顕著な時期でもあるだろうから、動かすことで筋力や体格をつくることが重要なんだろうなってことが再認識できたね。



 で、隣で練習してたバスケ部の顧問にも、もうコーチ外れました、一緒に練習させてもらったりといろいろお世話になりました、と挨拶したら、「そうなんですか? 残念です。でもおつかれさまでした」と握手を求められたときは嬉しかったな。僕は厚かましいお願いを申し出て迷惑だったんじゃないかなと恐縮しっぱなしだったんだけど、「バスケ部も一緒にトレーニングしたことは良い刺激でした。そしてコーチのそうやって何かをしてやろうという行動や卒業式まで来てくれたりする姿勢や熱意は、きっと生徒にも伝わっているはずです」とまで言ってくれたんだ。てかね、ホントは僕が生徒1人ひとりにこういう言葉を残さなければいけなかったんだよ。ちゃんとその人の行動を見てたことを口して、評価してあげるってね。これこそ、最後の挨拶ってやつだよ。さすが本職の「教師」だなと感心したよ。


 ちなみに新1年生は9人が入部し、新2年生にも1人の新入部員が加わり計7人に。新3年生は相変わらず1人だが、部員は全部で17人となったわけだ。今後どう強くなっていくか、静かに見守ろうと思う。そして5月の大会には応援に行こうと思っているんだ。