長谷部誠著『心を整える。』感想


 元々はね、なんかいけ好かないイメージだったんだよね、正直。長谷部が浦和レッズにいた頃の話だよ。てか、アテネ五輪などでも代表に呼ばれてなかったから、馴染みがないって言った方がしっくりくるかな。その頃は、同じレッズのボランチと言えば鈴木啓太の印象が強く、応援してた記憶があるね。で、そのうち長谷部も代表なんかにも呼ばれるようになって、ゲームに出はじめた頃も「ああ、あのレッズの17番か。それよりもっとメジャーな選手だせよ」とか思ってた記憶があるね、正直な話。なんか泥臭いイメージがあって、応援してなかったんだよ。でもさ、やっぱりスポーツの世界ってのはすこぶる単純明快で、結果が出れば一転ファンになるわけだよ。ころりとね。ことさらキャプテンであったり中心選手であれば熱狂的ファンにとどまらず信者の域まで達するってのが、スポーツ選手への大衆的な見方だと思うんだ。つまりさ、僕も今となっては、正確には2010のW杯からは、長谷部を支持する人間の一人なんだよ。ミーハーな話かもしれないけどね。


 でまあ、この本を買ってみたわけだけど、「ストイック」という言葉が思い浮かんだんだよ、長谷部って人間にね。でさ、「ストイック」って言葉からは、「心が強い」みたいな「強さ」を連想をする人が多いと思うけど、長谷部は「心」というものに対して「整える」というアプローチをしてるわけさ。まあ、タイトルを見ればわかることだけどさ。で、それでいて「ストイック」さを感じさせるわけさ。「整える」という静のアクションで「ストイック」「強さ」の印象を与えるって、なかなか男前なことしてくれるよね。この辺がニクいなと感じたんだよね。


 でね、ブレイクする前の雑草時代のエピソードなども書かれていて、僕が一番心に響いたのは、プロ入り直後に両親兄弟をスタジアムに招待したって話だね。はじめて何かの試合のメンバーに呼ばれたので、プロになった自分の姿を見せようと家族に声をかけたってわけさ。でも、長谷部は試合に出ることがないまま90分が終わってしまい、とても不甲斐ない思いをしたって話だよ。こういうエピソードって逆になかなかないよな、って思ったんだ。そもそも、自分の本を出しているようなスポーツ選手なんて、物心ついた頃からスター街道まっしぐらってなもんで、「天才ゆえの苦悩」「あの怪我さえなければ」みたな部分にスポットが当てられることが多いのだけど、「家族を呼んだのに試合に出られなかった」という、むしろ圧倒的大多数のアスリートが経験している情けない一面を持っており、それを吐露していることに好印象だったね。だからね、もしかしたら「僕も長谷部に成りうる」みたいな親近感を感じるんだよね。「僕も本田△に成りうる」とはなかなか思わないだろうけどね。


 まあとにかくさ、読み応えはあるよ。とても参考になるし、とても考えさせられたね。


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