映画「さや侍」感想


 これはおもしろいと思うよ。まあ、いわゆる有名人監督の作品なので、賛否両論はあるだろうし、なんか感情移入できないって人もいるだろうけどね。でも、僕はとても満足だったよ。


 まあ正直、映画の前半は「別にこんなの“映画”にしなくてもいいんじゃね? テレビ枠でやれよ」と思っちゃう部分もあったけど、ラストにむけて心地良い展開をみせてくれたね。全体のストーリーというかプロットというか、とにかく軸の部分がとてもシンプルなので、伝わってくるものの勢いがあるんだよ。だからこそ、あれこれ予備知識も持たず、また先入観も持たず観るとおもしろいのかなと思うね。「あらずじ」だとか「他人のレビュー」とかそういうの、ほとんど参考になんないと思うよ。本当に個々人の人間としての生理的な部分に語りかけているテーマだからさ。それを受け入れることができるのか、なんとなく受け付けないかって差で、この映画の印象も変わってくるだろうな。でもまあ、僕は充分楽しめたね。ああ、これは“映画”として表現すべき作品だなって思ったよ。最後まで観てみたらね。もし君がこの映画を少しでも気になってるなら観ておいたほうがいいと思うよ。


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【以下ネタバレ注意】



 映画の終盤で、ある「手紙」が読まれるシーンがあって、まあそれがクライマックスのひとつなんだけど、この場面は、映画が終わったあとに、即「もう一度観たい」と思ったんだよね。まず文章として、とてもきれいな構造をしていて、また演出もすばらしかった。だからさ、その手紙の全文を書き留めておくよ。もし君も、あの手紙に感動したなら、ここでもう一回確認してくれよな。

 父から娘へ〜さや侍の手紙〜全文

『父は死にました。でも心配しないで下さい。父は死にました。でも生きていたときよりも元気です。血を見ましたか。うつくしかったですか。みにくかったですか。首はころがりおちましたか。上をむいていましたか。下をむいていましたか。

 投げ捨てたふりをしていた何かに、少しずつ追い詰められていくような思いの中、あなたは一生懸命父の背中を押してくれました。もう一度その何かに立ち向かわせようと一生懸命父の背中を押してくれました。父は侍でしたか。誇りますか。恥じますか。恨みますか。父は侍でしたか。

 父は死にましたでも心配しないで下さい。父は今母と一緒にいます。あなたにとって幸なのか不幸なのかわかりませんが親と子の絆は永遠です。もしかしたらこうしてはじめて親と子の絆は、永遠となるのかもしれません。

 もし会いたくなったら愛する人と出会い、愛する人を愛してください。めぐりめぐりめぐりめぐって、あなたが父の子に生まれたように、めぐりめぐりめぐりめぐって、いつか父があなたの子に生まれるでしょう。めぐりめぐりめぐりめぐっ て、ただそれだけですがそれがすべてです。めぐりめぐりめぐりめぐって、ただそれだけですがそれがすべてです。』


◆【さや侍】父から娘への手紙(全文)<つかはらクリニック院長のブログ (2011.06/19)
※強調部分は筆者による