ひとりごとの正体


 だいぶ前から、なんとなく気づいていたんだけど、仕事中に「ひとりごと」を言うときって、たいていはサボってるときだよね。


 うん、つまりさ、君がもし仕事をサボっていて“……、いい加減ちゃんと仕事しようかな”って思ったときに、とりあえず「うわ〜、まじかぁ……」とか「あれ? ミスった……?」とか、それとなくつぶやいてみて、まわりの席の人に仕事してますよアピールしとくってのが、ひとりごとが生まれる原理だと思うんだ。本当に仕事に集中してるときは言葉なんて発しないし、また、なにか口にするときは誰かに伝えたいことがあるときだから、誰にでも聞こえるようにはっきり発言するはずなんだ。つまり、本当に1人っきりでいるときのひとりごとならあり得るだろうけど、複数人でデスクワークをしてる場面での「ひとりごと」なんて、どう考えてもあり得ないんだよ。その人の性格うんぬん関係なくね。まあサボってるとまではいわないにしても、少なくとも「仕事してます!」って主張をしたい気持ちが「ひとりごと」の正体だと思うんだ。



 まあ、そもそも言葉なんてものは、他人に対してのアピールの一種なわけだから、なにかしらの「言葉」が聞こえてきたら、構ってやるのが最良かもしれないね。それが仮にサボってる人間の単なるモーションであっても、「どうしました?」とか気にしてあげることで、全体として仕事をやってる感が演出できるからね。そういう人って、そのまま黙ってスルーしちゃうと、また適当な時間が経ったらサボりはじめるに違いないだろうからね。で、サボってないなら、それこそ「なにかをうったえたがってる」わけだから、気にしてあげるようにすべきだしね。


 あと君もね、みんなが黙々と仕事をしてる場で、ついついひとりごとを言わないように注意しなよ。きっとみんな潜在的に気づくと思うんだ。「ああ、こいつなんか言ってるけど、仕事してるフリをしたいだけなんだな」ってね。