Magic Hour


 東京でバンドをやってた頃の話なんだけど、その当時演奏してた曲の歌詞の中に「繋がっていよう」というフレーズがあって、それが僕の中の深い部分に突き刺さっているだよね。別の言葉で言うと、お気に入りってことだよ。当時の僕は完璧なまでに社交的ではなく、初期の村上春樹よろしくデタッチメントをモットーとしてた頃だから、なおさら「誰かと繋がる」という言葉の重みってものを感じたんだろうね。10年前の2001年くらいの話かな。まあ、それをふと思い出したんだ。というのもね、中学の部活の連中と再会して練習なんぞをしてみたり(年末にOB戦があるのだが)、高校の同級生とも同窓会をすることになったってことで、昔の自分や、昔の環境との繋がりを感じることが多かったんだよね、今年は。それに加えてね、夏頃に「投資信託」に興味を持ったわけだけど、今のお金を将来にどう残していくかなんてことも考えるようにもなったりしたんだよね。これって、ここ数年じゃ、僕の中芽吹いた大きな新しい価値観のひとつだね。


 つまりね、過去から今へ、今から未来へ、という繋がりを意識することが大きい1年だったんだよ。



 それと平行してね、今年を象徴する出来事ってのは、多分誰に訊いても、それが日本人であるかぎりは3月の震災だって言うだろうね。でもね、北陸の片田舎に居る限りは、震災後に生まれた「絆」という言葉が示すほどの強い危機感や連帯感は必要とされなかったんだよ。揺れも少なければ、電気の心配もなかったわけだからね。それよりかは、被災地にいる“誰か”や、東京にいる“仲間”とTwitterなんかを通して、繋がっているという実感の方が強かったし、意味のあることだったんだよ。


 つまりさ、こういうことだよ。僕にとっての今年の漢字は、『繋』。「ツナガル」。音読みでは「ケイ」。


 さらにさ、これまでは1人でえっちらおっちらと近所を走ったり、市民レースに出たりしてたわけだけど、春先からチームに入って数人で走るようになり、そして駅伝にまで出て、襷を繋ぐ難しさとおもしろさってのも味わえたしね。それからさ、我がドラゴンズの連覇でもって、勝利を繋ぐ喜びも得られたわけさ。繋がっていたんだよ、今年は。


 繋っていよう。過去も今も未来も、僕も仲間も、繋がっていよう。繋がっていよう――。

◆今年の漢字は「絆」 2位「災」、3位「震」asahi.com (2011.12/12)


 日本漢字能力検定協会京都市下京区)は12日、2011年を表す漢字は「絆」と発表した。この日、世界遺産清水寺(同市東山区)で、森清範(せいはん)貫主(かんす)が特大の和紙に墨で書き上げた。

 全国から過去最多の49万6997通の応募があり、「絆」は最多の6万1453通(12.4%)だった。東日本大震災や台風被害で家族の大切さを感じ、支援の輪も広がったことに加え、女子サッカーなでしこジャパンのチームワークも理由に挙がった。2位は「災」、3位は「震」と続いた。

 森貫主は「みなが手をひとつに携えて復興を重ねていこう。そんな願いを込めて書きました」と語った。

 「今年の漢字」は阪神大震災が起きた1995年の「震」に始まり、今年で17回目。