譜面を見るということ、カンペを見るということ


 ピアノの発表会に行ってきたんだ。まあ、どかの楽器店(教室)の発表会だったんで、演奏時間は1人2〜3分くらい、10数人でかれこれ1時間足らずの会だったんだけどね。ショパンとかモーツアルトみたいなクラシックだったり、歌謡曲だったり、はじめて聴くような楽曲だったり、めいめいに好きな曲を選んで発表してたよ。


 でね、気になったことが1つあるんだ。それはね、だいたい半分くらいの人たちが、譜面を見ながら演奏してたってことだね。僕はね、譜面を見ながらの演奏ってのが、どうもいけ好かないんだよね。誰か(作曲者)が決めたフレーズをなぞってるだけのような気がして、ひっかかるんだよね。もっとあんた(演奏者)の個性を表現してくれよと思っちゃうんだ。特に、自分が「これ」と思って選んで発表する曲なんだから、がっちりアタマに入れておけよと思うんだよ。その場のノリで選曲したカラオケじゃないんだからさ。



 でもね、こういう考え方ってのは、きっと自分がバンドをやってからだと思うんだ。バンドで自分たちの曲をつくってたら「楽譜を見る」なんてことないからね。そもそも「オリジナル曲」っていうくらいだから、自分がこうと決めた音が正解なわけで、その場でふと思いついたフレーズに急遽変更したってオーケーだからね。そういう音楽の方が楽しいだろって思うんだ、僕は。まあ、ポップスや歌謡曲とピアノの発表会で演奏される楽曲は、が違うから一様に比べることもできないんだろうけどね。


 同じような理屈で、手元のカンペを見ながら喋ってるスピーチとか挨拶とかもあんまり好きじゃないんだよ。多少下手だろうが、詰まろうが、どもろうが、言うべきことが抜けてしまおうが、紙なんか見ながら喋るなよって思うんだ。むしろ、自分がアタマにインプットできないような複雑な内容なら、手元に資料も原稿もなく聞いてる方だってアタマに入るわけないしね。もちろん、プレゼンとか長時間の講演とかは別だけどね。


 つまりさ、何かを発信するときは、自分のアタマの中にイメージできるものじゃないと、受信する側も上手に受け取れきれないよということだよ。紙に書かれた音や言葉をどれだけ上手に丁寧に発信したって、完璧な伝達にはならないんだよね。