OB戦をしたんだ


 今年の夏頃から密かに持ち上がっていた企画として、中学のバレー部でのOB戦ってのがあったんだよ。まあ去年僕が部活を見てたことに端を発し、歴代のチームを集めて、現役連中と交流をはかるって感じでね。とはいえ、そこかしこに散らばっているOBを捕まえるのは至難の業で、結局は言い出しっぺの僕らの世代と、地元の高校に通っている高校生しか集まらなかったんだけどね。やっぱり高校を卒業して県外に出てしまうとなかなか連絡がつかなくなるし(そもそも探すのが手間だ)、また社会人になるとなかなか時間の都合がつかなくなるってことだよね。「同窓」的な催しには、こういうハードルがつきものだよね。


 でまあいろいろあったけど、最終的には5チーム組めたんだよね。現役の中学1年チーム(13歳)、中学2〜3年チーム(14〜15歳)。OBの高校1年チーム(16歳)、高校2〜3年チーム(17〜18歳)、そして我らが34歳チーム。このダブルスコア以上の年齢の落差が見どころのひとつだよ。


 総当り戦の結果、我々34歳チームは1勝3敗で、中学1年チーム(13歳)にしか勝てないという面目無い成績だったんだけどね。それでも終始「しかし、当時の実績だけなら俺らが1番だ」という貫禄だけは終始見せつけて終われたと思うよ。貫禄だけはね。


 その後の打ち上げでは、当時の顧問の先生も来て(そもそも日にちを間違えていたらしく、急遽呼び出した)、短い時間だけどあれこれ充実した時間を過ごせたな。中学時代はビシバシやってた顧問と生徒が、今は酒を飲みながら「あのときはこうだった」的なミニマムな話を持ちだして過ごすのも、なかなか感慨深いものだよ。



 でね、気づいたんだけど、30歳を超えたおっさんどもが、わざわざ集まっているその中心部にあるのが、「しかし、実績だけなら俺らが1番だ」という自負なんだろうと思ったんだよね。まあ他人が聞けば自慢みたいな話になるのだろうけど、当事者にとってみれば、「集合」がかかったときに、何だかんだ言いながらも時間を割いて都合をつけるこれ以上にない理由になるわけだよ。試合に出てた出てないなんてまったく関係なく、チームとして何かを成し遂げた仲間だから、集まるモチベーションになるし、話題にも事欠かないんだ。とても貴重なメンツだなと思ったね。


 というかね、僕らの世代は、そもそも何重もの奇妙で「特別」なめぐり合わせの中にいたんだよね。中3時に地元で全国大会が行われるって理由で1年のときから強化指定学年とされていた――。他校のスパルタ顧問が僕らの入学と同時に転任してきた――。通常せいぜい6人前後しかいない部活なのだが僕らの代だけ20人を超えるメンバーに恵まれた――。「地元開催枠」という特別枠で全国大会に出場した――。学校から徒歩5分という学区内の体育館が本会場だった――。こういった驚異的な偶然が重なりあって、結果全国ベスト8。でもって、20年ほど経って、当時の現場である体育館で試合をしたり、後輩と関われるということも「特別」以外の何物でもないなと。


 まあ現役の中学生にとって「OB」ってものにどれだけの価値や存在感があるのかわからないし、「学校」と関わり続けるのは、OBといえどもいろいろ難しい面もあるようだろうし、また中学生と試合ができるかどうかはなんとも言えないのだろうけどね。それでも僕ら自身の、この「特別」な繋がりを持った仲間との交流は枯らしてはいけないなと思ったよ。そもそもは後輩の面倒を見るって名目だった気がするけど、忘れかけてた自分たちの絆を思い出させてもらった気がするよ。OB戦ってものからね。