陽の射す方へ

岩井俊二 監督『リリイ・シュシュのすべて』


「私も飛びたい。空、飛びたい」


 何度も何度も観ているのだが、いつ観てもその都度、感じるエーテルの色が違う。


 で、今日は、太陽の光がとてもきれいに映し出されていることが印象に残った。多分、ここ何年も意識して太陽の光ってものを見てない、というか太陽のことなんてろくすっぽ気にしたことなんてないからだろう。夕方の太陽って、こんなにきれいだったのか、と改めて感じた。


 東京でせかせか仕事をしていると、夜空を見上げることはあっても、昼間にゆっくり外の空気を感じることはない。まあもちろん、毎日外で働いている人もいるだろうけど、少なくとも僕はほとんど室内だし、あげくずっとパソコンと対面しっぱなしだ。「東京の夜空には星がない」なんてよく言うが、「東京の昼間には太陽の存在価値はない」と言ってもいいような気さえする。夕日が射してくれば「そろそろ終わりかぁ」なんて感じることもないから、太陽が教えてくれる時間というものに、さしてありがたみもない。


 まだ、大学生だった頃は、1日の太陽の動きというものにある意味敏感だったような気がする。夜更かしして、朝日に目を細めながら重たい気分で家に帰ったり、目覚めてみると夕方で、窓から差し込む赤橙の光にせつなくなったり。それでも1日や季節の流れとか、においのようなものを陽の光からも感じていた。でもいつの頃からか、そんな余裕すらなくなってしまっている。別に朝だろうが昼だろうが、夏だろうが冬だろうが、関係ない。


 ところで、今気づいたのだが、もう『リリイ・シュシュのすべて』のDVDはユーズドしかないのかもしれない……。ああ、早めに買っておけばよかった。


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