新幹線で見つけたナイスなコピー

酒は人をサムライにする。吉乃川


酒は人をサムライにする。吉乃川


 吉乃川というのは、新潟県長岡市にある日本酒の会社らしい。ので、おそらく上越新幹線とかその手のエリアでしかお目にかかることのできない広告。


 日本独特の力強さだとか、忍耐強さ、スピリッツといった意味合いでサムライという言葉がよく使われているのを見たり聞いたりする。けど、なんだか無駄に多用されているような気がして、僕はあんまり好きではない。「お前ら単に“サムライ”って言いたいだけだろ」とか「“サムライ”って言っとけば許されると思ってんじゃね?」みたく。


 でも、この吉乃川の広告の“サムライ”という言葉の使い方には不思議な力強さを感じる。雪国ならではの寡黙で品のある静かさと、胸の奥のほうに隠されている熱い心みたいなものを端的に表現している広告である気がするわけだ。んで、うまく写ってなかったのでカットしたが、この左側に写真が3点ほど載っていて、それがまたとてもチープなのである。こういう不器用さも“サムライ”を“サムライ”たらしめるひとつの要素なのかもしれない。


 もしくは、このコピーには、「自分も“サムライ”になれる」という憧れや可能性みたいなものを感じさせる魅力があるのかもしれない。今現在、“サムライ”という言葉は「海を渡ったサムライ」みたく、他の優れた日本人を賞賛するときに使われる言葉であって、凡人である我々は、指をくわえてそのサムライと形容された人物の活躍を見ていることしかできないわけだ。でもこの吉乃川の広告は、僕ら一人ひとりにうったえかけている。「酒はあなたをサムライにする」と。


 日本人には、“サムライ”であることを、この上ない賛辞のひとつと感じる血が流れているのだと思う。そういった部分をくすぐるいいコピーだと感じた。


◆吉乃川のホームページ