Yes is the answer
僕の中での「世界三大かっこいい男」というのは、ジョン・レノン、ジェイ・ケイ、落合博満である。まあ、今の僕にとってはジャミロクワイのジェイ・ケイはいささかその存在感が薄くなっているが、一度決めた「世界三大」をコロコロ変えるのも変なので、この3人に一目を置き、強く崇拝している。ちなみに「世界三大かっこいい女」は、マドンナ、ビョーク、吉田沙保里である。
とにかく、「世界三大かっこいい男」の中でも最大級のかっこよさを誇っているのがジョン・レノンだ。その伴侶であるオノ・ヨーコの正式な許諾を受けた世界初の公認ミュージアム、ジョン・レノン・ミュージアムに足を運んだ。2000年のオープン以来、行きたい行きたいとは思っていたが、さいたまというなまじっか近い場所にあるので、「そのうちいつか」とずっとスルーしていた。しかし、その「そのうちいつか」を実現させる日がきたわけだ。
最寄のさいたま新都心駅を降りると、そこにはあたたい秋の雨が降っていた。ミュージアムがあるさいたまスーパーアリーナに向かう前に、けやきひろばに行ってまずは食事することにし、「わっはっは風月」というお好み焼き屋さんで、お好み焼きを食べた。僕の中での「世界三大うまいもの」は、餃子、レバ刺し、お好み焼きだからだ。
そんなこんなで、ミュージアムを訪れる。入館前にはトイレで石鹸を使って手を洗った。もちろんミュージアム内では、何にも手に触れることはないのだが、手はきれいにしておくべきだと思い、そうせずにはいられなかったのだ。で、最初に結論になるが、今まで、いろんなものを観たり聴いたり感じたりしてきたけど、もう間違いなくそのマックスに値するものばかりだった。まずは数分間のショート・ムービーを見るのだが、シアターの明かりが消え、目の前にヨーコが映し出された瞬間からもう鳥肌が立ち、身体が震えはじめるほどだ。
その後、2つのフロア、9つのゾーンに渡って、ヨーコ秘蔵のゆかりのアイテム約130点と共にジョンの生涯を追うことができる。え? どうして9つのゾーンなのかって? おいおい、そんな野暮なことは訊かないでくれよ。ジョンといえば「9」。10月9日生まれのジョンは、自身のラッキーナンバーを「9」としており、ビートルズ時代には「REVOLUTION No.9」、ソロ後は「♯9 Dream」と、曲名の中にもその数字を使っているくらいなのだ。彼のミュージアムにも「9」の要素を入れないわけにはいかない。
■The Beatles - Revolution #9
■#9 dream
少年時代からはじまるその9つのゾーンとファイナル・ルーム、そしてイベント・ルームには、すでに知っていることもあれば、まったく知らなかったことも多々あった。しかし、本や雑誌の解説で見たり聞いたりすることとは違い、さすがあの口うるさいヨーコも認めただけあってのミュージアムだ、この雰囲気や演出に圧倒される。説得力が違うし、観る側の理解力、吸収力も違う。しかし、すべての展示品と文字と映像とを丹念に、何一つ見逃さない、聞き逃さないようにと注意してまわったので、全部で3時間ほどかかった。その後、18時の閉館ぎりぎりまでミュージアム・ラウンジでDVDを鑑賞した。
ジョンのメッセージというか大きなテーマとして「愛」というのは、欠かせないキーワードなので、本当は好きな人と一緒にこのミュージアムに訪れるべきだったのかも、と序盤は思っていたが、いやここはジョン信者にとっては1人で来る場所だと思う。なぜなら、とにかくもう、ここに展示されているすべてを消化しようと思うと、とにかく時間がかかるし、それ相当の集中力も必要になってくる。1人で堪能することでさえ精一杯である。無職という特権を活かし、木曜日という平日に来れた自分が幸せだと思った。
■Love
僕がもっとも印象に残ったのは2つある。「ハウスハズバンド」というゾーン9から「ファイナル・ルーム」と続く演出と、そして、「ジョンとヨーコの出会い」というゾーン4の「天井の絵」を模した展示。「天井の絵」"Ceiling Painting"とは、ヨーコの『未完成の絵画とオブジェ』展に出品された作品。それは、ジョンとヨーコを語る上で欠かせない有名過ぎるエピソードと共に知られている。
画廊に入ると白い脚立があり、その天井には絵が貼ってあって、虫めがねがぶらさがっていた。僕は脚立にのぼって、虫めがねでのぞいてみた。絵には小さな字で「Yes」と書かれていた。
「No」とか「インチキ」みたいな意地の悪いことが書いてあったら、すぐに画廊を出て行ったよ。「Yes」だったから、僕は「これはいけるぞ、心温まる気持ちにさせてくれる初めての美術展だ」と思ったんだ。――ジョン・レノン
■Tokyo美人物語 オノ・ヨーコ
ミュージアムでは、その「Yes」は手を伸ばせば優に届く位置に、虫めがねを使わずともわかる大きさで書かれていた。僕は左手を伸ばし、中指の腹の部分で、その「Yes」に、そっと触れて、目を閉じてみた。「Yes」。ジョンとヨーコのメッセージが、僕にもしっかりと伝わったような気がした。
■The Ballad of John and Yoko
■John Lennon-Cold Turkey
■The Beatles -- A Day in the Life
ビートルズで一番泣いた曲「A Day in the Life」。
■The Beatles - Strawberry Fields Forever (colour)
■The Beatles - Because
■Across the Universe
■The Beatles - Norwegian Wood (This Bird Has Flown)