車社会の最大のデメリット


 今日ね、仕事の最中にちらっと小耳に挟んだ話を紹介しようと思うんだよ。


 多分ね、その声の主は電話で東京かどっかの人と喋ってたと思うんだよね。で「いや、金沢はそっちと違って車社会ですからねぇ」とか言うんだよ。「まず普通に街中に電車とか走ってないですしね」とかね。何を今さらとか僕は思ったね。金沢は電車が走るような規模の街じゃないし、別に電車なんか走ってなくたってどうだっていいじゃないかって思ったんだよ。そんなつまんないこと仕事中に話すことかよ、とかね。でもそのあと話はこう続いたんだ。「つまりですね、こっちにいると他人のファッションとか、他人がどんな格好してるかとか、あんまり目に入らないんですよね。うん。そうですよ、みんな車で1人で出勤してますからね。だから、わからないんですよ、他人のことが」。なるほどね、と僕は感心したね。


 確かに、僕が東京にいる頃は電車の中で、それはもういろんなタイプの人間を見かけたもんだよ。もちろん覚えているのは妙な奴とか酔っ払ったおやじとかばっかだけど、知らず知らずのうちに、世の中で今何が流行っているのかとか、みんなどんな趣味を持っているのかとか肌で感じていたと思うんだよね。無意識のうちにね。子どもも女の人もDSやってるなとか、いいおっさんもマガジンとか読むんだとか、一見普通のおばさんなのに英字新聞読んでるなとか。なんでそんなつまないことでケンカしだすんだよとか、ガキどもうっせーよとか、バカップルは2人っりきりのときにしとけよとか。まあとにかく、他人を見るという行為は、少なからず自分にとって得るものも多いんだと思うよ。参考にしたり反面教師だったりとね。


 車という閉鎖的な移動機関の最大のデメリットがここにあると感じたね。つまり社会とのデタッチメントだよ。会社内とか自分の仲間内のコミュニティでは得ることのできない価値観のようなものを否応なしに感じられるのが、電車という移動機関のすばらしさだと思うね。中吊り広告しかりね。最近は車の運転が楽しくて仕方なかったけど、なんだか電車やバスの方が恋しくなってきた気がしてきたんだ。正直な話。