『象』レイモンド・カーヴァー


 もともとね、僕はレイモンド・カーヴァーを別に特別好きとか尊敬してるってわけじゃないんだよね。というか外国の短篇ものって、すっとは頭に入ってこないことが多いから、読み応えがないって感じることもしばしばなんだよね。しばしば。じゃあ、なんでカーヴァーを読んでるかと言えば、理由は簡単で村上春樹が誠心誠意彼を称え、精魂込めて翻訳しているからだよ。


 で、今回この「象」という短篇集をチョイスしたにはわけがあって、9月に台湾に行ったときに応援したチームがエレファンツだったからだね。うん、それだけの理由だよ。


 カーヴァーの描く話は、救いようのない閉塞感のようなものがあって、それでいて結論としてなにも解決せず、どこにも出口が見つからないというとても心地悪いものが多いんだよね。でもこの「象」の作品はわりかしどれも読みやすかったように思うな。多分、作者自身の死ぬ間際に書かれた作品が多かったからと思うんだよね。死を予感したのか、難しい事柄が全部浄化されたんじゃないかなとか思うんだよ。


 ただ前も同じこと書いたような気がするけど、カーヴァーの作品は味わえば味わうほど、深みがあるというか、この閉塞感がクセになりそうなムードがあるんだよね。まあ、今すぐ読み返そうなんてほど僕も暇じゃないけど、またいつか年をくった上で読んでみると、それはそれで、新しい世界を感じられるような気はしてるんだ。お世辞じゃなくてね。