ナチスとは



『わが闘争』ヒトラー


 僕がナチスユダヤ人に人一倍関心が強いことは君も知っているよね。でもね、偉そうなこと言ったわりには『わが闘争』を読むのははじめてなんだよね。しかも読むと言ってもまんがで読んだわけさ。


 まあとにかくね、この話の中で僕が一番感銘を受けたのは、ヒトラーがドイツ労働者党に入党した直後のシーンだよ。ヒトラーは組織の確立よりも先に、ビラや印刷物、印章などの必要性を説き宣伝活動、つまりはプロパガンダを第一に実行させたんだ。

この党の問題点は民衆に無視されていることだ! 民衆の関心を得ないことにはただの自己満足にすぎない。多くの支持者を獲得することが最優先だ。

 と啖呵を切るわけさ。

宣伝は手段だ。その目的から判断するべきだ。我々の目的は大衆を獲得することにある。では人々が最も手に取りやすい物とはなんだ?
「新聞」
その通り。
(中略)
そして次に…。新聞がその効果を発揮する間に我々にできることとは何か? ビラだ! できるだけ多くの人に配る。何度でも。何枚でも。誰にでも。


 もう僕はじーんとシビれたね。天才だね。ヒトラーのことを言ってるんだよ。ナチスプロパガンダと言えばゲッベルスてなもんで、僕はこの宣伝理論がゲッベルスによってどこまで精度を高めていくかにも興味津々だったんだけど、『わが闘争』を書いた時点ではまだゲッベルスとは出会ってないぽいね。最後まで登場しなかったよ、ゲッベルスは。


 一応言っておくけどさ、別に僕はナチスホロコーストを褒めちぎってるわけじゃないんだよ。一人の人間がひとつの団体を、ここまで多くの人間に周知させ、そして影響を与えたということに感心してるんだよ。そういう点ではヒトラーは僕にとって魅力のある人物なんだよね、思想的なものは抜きにしてさ。